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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 ― 第3回

新房監督のアニメ論 「制約は理由にならない」 【前編】

2010年07月31日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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 アニメに詳しい人なら「新房昭之監督」「シャフトの演出」に一家言あるかもしれない。

 グラフィックデザインのようなポップな色づかい。めまぐるしく変わるカットがあったかと思えば、何秒もポーズを変えずにしゃべりつづけるキャラクターが登場する。早口のセリフがポンポン飛びかい、次のシーンでは静かなモノローグと叙情的な光景が……。そんなトリッキーな演出が何よりの魅力だ。

 「荒川アンダー ザ ブリッジ」も、そうした「新房演出作品」のひとつ。

 荒川の河川敷を舞台に、個性豊かな人々が繰り広げる、時におかしく、時にじんとさせられる日常。監督に、なぜそんな演出をするのか聞いてみると、それは「これがアニメ制作現場」という常識のとらえなおしに端を発するものだと語ってくれた。

 アニメという作品づくりに集まったスタッフは、新房監督にとって「誰」なのか。ばらばらの人々が、ひとつの場所に集まるというのはどういうことなのか。そしてその作品を見てくれる人は、一体誰なのか。その常識はずれのおもしろさの原点が、「荒川」の制作過程に見えてきた。

荒川アンダー ザ ブリッジ

 舞台は荒川河川敷。そこで出逢った勝ち組エリート青年・市ノ宮行(いちのみやこう)=通称・リクと、自称金星人のホームレス美少女・ニノ。不器用な二人の恋は時におかしく、時にせつなく……。そんな二人を中心に、奇怪な河川敷の住人が巻き起こす騒動の日々を描いた元祖電波系新感覚ハートフル・ラブ(?)コメディー。原作は中村光。現在、ヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で連載中。オフィシャルサイト

新房昭之監督

 新房昭之(しんぼうあきゆき)。1961年9月27日生まれ。福島県出身。主な監督作品に「月詠 -MOON PHASE-」「ぱにぽにだっしゅ!」「ひだまりスケッチ」「さよなら絶望先生」「夏のあらし!」「化物語」などがある。

新房演出の発端は「できないこと」

―― 新房監督と、アニメ制作会社・シャフトが手がける作品は、個性的な演出でたくさんのファンを獲得しています。なぜ、あのような演出の形になったのでしょう。

新房 実は、最初の動機はポジティブと言えるものではなかったんです。今では少し落ち着いてきたんですが、アニメは2000年代に本数がぐっと増えました。そのとき、特に作画が人手不足になったんです。そうなると演出的に狙いたいカットがいつも必ず作れるわけじゃない。時間的、人的制約の中で、一定のクオリティを保つにはどうしたらいいんだろうと考えはじめたんですね。今の演出技法は「安全策」というところもあって、制約がある中、クオリティを安全に追求していった結果でもあるんです。

―― 「安全策」ということですが、アニメの表現としては斬新ですね。

新房 時間がない中でも、僕が「自分のフィルム」を作り続けるにはどうしたらいいか、考え続けたというところなんですね。「自分のフィルム」というのは、僕の目から見て嫌なものが入らない……嫌なカットとか、嫌なアングルなどがない。それはもう非常に生理的な部分なんですけれども。制約の多い中でもうまく見せるにはどうしたらいいかと考えて、何となく今のスタイルになってきたという。

「新房演出」とは

 「限られた時間と人手の中で、生理的に気持ちいいものを『安全に』追究していった」という新房監督。たとえば、同じ場面でキャラクターが会話するときには、アップで入れるのは1人。2人以上を同じ画面に入れる際には、ロング(遠景)にする。それはアップにした人物の様子を、細かい絵の動きで見せなくても良いからだという。そして、会話をさせるときには、しゃべるキャラクターが変わるごとにカットを変える。その早いカット割りが、観る側からすると、テンポ良く新鮮な印象に映るのだ。

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