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CO2を6割削減した内田洋行本社(湾岸署じゃないよ)

全館LED照明のちょっと未来なオフィス

2010年07月06日 09時00分更新

文● 中西祥智/アスキー総合研究所

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LEDパネル内部

内田洋行のLEDパネルの内部。2色のLEDが並んでいて、それぞれの照度を変化させることで、明るさだけでなく照明の色温度も変えることができる

 7月3日に、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』が公開された。この『踊る大捜査線』シリーズの“湾岸署”として、江東区潮見にある株式会社内田洋行の以前の本社オフィスがロケに利用されていることは、熱心なファンの間では比較的知られているだろう(ググれば、聖地巡礼的に訪問しているファンのブログも大量に見つかるはずだ)。

内田洋行新川オフィス

中央区新川の内田洋行本社外観。

 『踊る大捜査線 THE MOVIE3』では、湾岸署が新庁舎(現実にも警視庁に「東京湾岸警察署」が開庁しているが)へ移転する直前の3日間に起こった事件が題材となっている。それに先だってというわけではまったくないだろうけれど、内田洋行も今年2月に、都内4拠点にオフィスを移した。

 中央区新川にある新本社は、築39年の古いオフィスビルなのだそうだが、同社はここを大幅にリノベーション。刷新されたオフィスを、6月23日に報道陣に公開した。

 館内各フロアのオフィスは、それぞれ各種オフィス用品を手がける内田洋行ならではの先進的な内装に仕立てられている。一方の壁一面にスクリーンを設置した会議室やセミナールーム、ICタグで蔵書を管理し、またエンタープライズサーチを活用して社内外の各種情報を検索・閲覧できるスペースもある。

 通信用の回線(1Gbps×2など)や、セキュリティ用の回線(100Mbps×4)の取り回しが最初から考慮されており、また多くのスペースでは、照明や各種機器は「スマート・インフィル」というアルミ製のフレームに設置されている。建物の壁や天井に直接照明やプロジェクター、パーティションを配するのではなく、フレームに設置することで、建物そのもにに手を加えることなく内装の変更やケーブル類の配線(フレーム内に通す)が行なえ、レイアウトの自由度が増すことになる。

左は4Fの、右は5Fの執務スペース。左のオフィスでは「スマート・インフィル」というアルミフレームに照明やデスクが設置されている。そしてどちらも、照明はすべて蛍光灯ではなくLEDだ。

左上は2Fのセミナースペース、右上は3Fのビジュアライゼーションスタジオ、左下は7FのBI(ビジネス・インテリジェンス)ルーム。どのスペースも、壁一面のスクリーンを活用できる。この2Fのセミナースペースは、アスキー総合研究所のセミナー等でも利用させていただいております。

 この内田洋行の強みのひとつは、オフィス内の機器類だけでなく、それらを連携させるソフトウェアも自社で開発し、提供していることにある。たとえば、会議室に多数のスクリーンがある場合、通常なら複数のプロジェクターとPCのどれとどれを接続するのかについて、いちいちケーブルを差し替えたりしなければならない。それが、同社のソフトウェアを使えば、PCやスマートフォン上で、PCとプロジェクターの接続関係を制御できる。ディスプレイケーブルを差さず、無線LAN経由でプロジェクターに投影することも可能だ。

左はパネル型、右はスポットライト型のLED照明。照度や明滅パターンは自由に設定でき、左の例では市松模様型に点灯させている(もちろん全部点灯することも可能)。

 そして、今回のリノベーションの目玉は、LED照明である。内田洋行は新川オフィス全館の照明を、ほぼすべて、蛍光灯からLED照明に変えた。自社で手がけるLED照明システムのデモも兼ねたものだが、これによって、年間の消費電力はこれまでの16万9960kWから6万2534kWへと62.2%、二酸化炭素排出量は年間56.4トンから20.8トンへ62.1%、それぞれ削減することができた。

LED照明の制御パネル

デモ用のLED照明の制御パネル。色温度や明るさ、点灯パターンをこういったかたちで設定できる。

 もっとも、消費電力やCO2排出量の削減は、単に蛍光灯をLED照明に変えたら実現できた、というものではない。照明の交換に加えて、利用実態に合わせた照明のON/OFFや照度の変更など、細かい制御を重ねたことによるという。

 例えば、人感センサーや照度センサーとLED照明を組み合わせて、人がいないときには自動的に消灯する、あるいは照度を下げるようにした。32段階の照度設定が可能で、部屋の利用形態によって(会議なのか、プレゼンなのかなどに合わせて)明るさを変えることもできる。昼光色や電球色といった色温度の変更も可能だ。それらも、スイッチやリモコンに加えて、同社の開発したソフトウェアで制御できる。

LEDモジュール

同社が韓国サムスン電機と共同開発したLEDモジュール。LEDをサムスンが提供し、内田洋行がそれを組み込んだシステムを販売する。

 4月の改正省エネ法の施行以降、オフィスの消費電力を「見える化」が話題になっている。どの部署やどのスペースが、いつ、どの程度消費電力を使用しているのかを、配電盤にメーターを設置して計測・表示するというものだ。PCのほか、iPadのようなタブレット端末に消費電力を表示するシステムも販売されている。太陽光発電パネルを導入していて、発電量をリアルタイムで表示する端末を利用しているご家庭もあるだろうが、それと似たようなしくみを企業も導入しようとしている。

応接スペース

レトロな印象の応接スペースのシャンデリアも、電球ではなくLED照明だ。

 消費電力を減らすには、「見える化」で得た情報を、実際の電力の使用に反映させなければならない。「お宅の部署は夜も電気を点けっぱなしなので、消灯して帰ってね」と指導するくらいならすぐにできるだろうけれど、人の出入りや周囲の明るさに合わせた細かい制御を人手でやるのは簡単ではない。ある時間になると強制的に建物内の電気やエアコンを消す企業や官公庁もあるが、スタッフが在席していれば、結局電気やエアコンのスイッチを付けて回ることになる。ITを使って、これをもうちょっと賢くすればいいのでは? という方向性の一例として、内田洋行の取り組みはちょっと先のオフィスのあり方を示している。

ドアストッパー

LEDともCO2削減ともまったく関係ないけれど、個人的に気に入ったのが、各階の階段に置かれた遊び心たっぷりのドアストッパー。

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