「はやぶさ」の裏側をソーシャルメディアで伝えたNEC
NEC宣伝部でWeb活用を担当する野坂 洋氏は、「ソーシャルメディア・ポリシーを掲げた背景と取り組み」と題して講演した。
ソーシャルメディアを「ペイドメディアと自社メディアの隙間を埋めるもの」と位置付けるNECは、国内大手企業として初めてソーシャルメディアポリシーを策定、公開したことで知られる。
ソーシャルメディア・ガイドラインを策定した背景には、NECを騙る偽Twitterアカウントが海外で散見され、公式アカウント一覧と公式ポリシーを明確にする必要が出てきた同社ならではの事情があったという。
NECでは一般に公開しているポリシーとは別に、社内向けのガイドラインも策定している。ガイドラインでは、マイクロソフトのハンドブックと同様に、ソーシャルメディア活用の戦略策定から、実際の運用にあたっての心構え、評価・分析の方法までがまとめられており、ガイドラインを通じた運用の標準化を目指している。
野坂氏ガイドラインに定められている評価・分析の事例として、「はやぶさ帰還キャンペーン」の取り組みを紹介した。Twitterなどのソーシャルメディア単体ではなく、「トリプルメディア(ペイドメディア+自社サイト+ソーシャルメディア)」を組み合わせて、「はやぶさ」をサポートするNECの取り組みの認知拡大を目指したキャンペーンだ。
このキャンペーンでは、NECビッグローブが展開するTweetのネガ・ポジ分析共有サービス「ついっぷるトレンド」を活用し、Twitter上での「NEC」というワードの出現率とユーザー数を計測。Twitter上での影響度を数値化し推移をモニタできる「TWIMPACT」というツールでも、NECアカウントの影響度上昇が確認できたという。
野坂氏は、他のモニタリング指標として以下のものを挙げて講演を締めくくった。
- ●ユーザランク
- 期間内の対象テーマについてツイートが活発なユーザーとNECとの関連性
- ●キーワード
- 出現頻度の高いキーワードとNEC関連の位置付け
- ●ポジティブ/ネガティブの判定
- ツイートがポジティブかネガティブか
- ●近距離キーワード
- よくツイートされるキーワードのセット、NECとセットになるキーワード
- ●RTランク
- 期間内の対象テーマについてRT数のランキングとNEC出現率
「軟式」の背景には攻めと守りの戦略が必要
3時間を越えるセミナーを通じて、各社のソーシャルメディアに対する取り組みが紹介された。一時のTwitterブームの熱狂とも言える状態は一段落し、企業のTwitter活用にも結果が問われる段階に入ってきている。巷では「軟式」と呼ばれる、消費者との緩やかなコミュニケーションがもてはやされているきらいもあるが、実際のところ一時言われたような「Twitterであれば常に気持ちの良い対話ばかり」とは限らないことは、すでに多くの事例が示しているとおりだ。
今回のセミナーで紹介された各社のガイドラインからは、成果を出すための戦略と評価指標を策定し、同時にリスクにも備えることが必要になってきていることを認識させられた。
また、笠井氏と熊村氏の講演のコントラストで明確になったように、いまのところFacebook不在、Twitter集中の日本のソーシャルメディアでは、海外事例をそのまま持って来づらいのも事実だ。Facebookの日本展開の動向も睨みつつ、はやぶさキャンペーンのような日本型の成功モデルを作っていく必要もあると言えそうだ。
著者紹介――まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+iPhoneでGoogle活用術」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto