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“JAXAの真田ぁ~ず”に総力インタビュー!第5回

祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【その5】

「はやぶさ」は浦島太郎!? 宇宙経由の輸出入大作戦

2010年06月16日 12時00分更新

文● 秋山文野 撮影●小林伸ほか イラスト●shigezoh 協力●JAXA/ジャンプトゥスペース

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回収隊が直面するのは、宇宙経由の輸出入――2010年6月14日~

 すでに再突入カプセル回収隊がオーストラリアへ向けて出発している。NASAの協力も得て、ただちにカプセルを見つけ出し、持ち帰るための約40人体制だ。


ミクロン単位の“何か”があれば解析可能

的川 試験探査機としては十分働いたと思っています。プロジェクト開始当初、ここまで最後の局面までくるとは予想していませんでした。しかし、みんな非常にがんばってよく来たなあというのが実感ですね。世間的には「ここまできたら最後まで」という期待が大変大きいので、チームの連中もそういう想いでしょうけれども、できるだけがんばってほしい、最後までいかなくてもいいからがんばれと。正直そんな感じです。


齋藤 今の分析化学の水準から言えば、もう本当にミクロン単位のものが一個あるだけでも十分にデータは取れる、研究はできるんですよ。だから、そういうものひとつでもいいから入っていてほしい。そういう気持ちはありますね。隕石の研究者としても、何が来るのか興味あります。開けてみてのお楽しみ。


矢野 私は、回収作業ではふたつの役割を担っています。まずは本体の方角探査。落ちてきたカプセルが出すビーコン、電波を捉えて三角測量を行ないます。全4局に分かれていて、その4局の情報を一カ所に集約する「本部リエゾン」を担当します。これは、カプセルが落ちるところまで。

 ふたつめは、こちらがメインなんですけど、私はもともと藤原先生の助手でしたから、カプセルを相模原キャンパスのキュレーション施設まで持って行く輸送班の責任者です。

 輸送の箱を準備したり、ちゃんと洗浄して窒素を充てんした箱に入れて持ち帰る。カプセルが正しく切り離されていない場合は、安全化処理をするといった作業を見守ります。専用機にも同乗し、日本から陸路の輸送にも付き添います。

 そしてカプセルが落ちた場所の環境計測ですね。万が一、カプセルが開いていた場合、どんな環境に落ちて、どんな地球の物質で汚染されたのか知っておく必要がありますから。砂漠の砂を採取したり、温度・湿度を計測したり。

 それと、ウーメラでは組み立て式の簡易クリーンブースを作ります。それを組み立てて、清浄にし、道具も全部洗浄してリハーサル。そして1時間でも早く相模原のクリーンルームへ。現地では休みなしですね。


國中 今の私はイオンエンジンの担当というよりは、カプセル回収のほうのとりまとめが忙しくて。仕事の種類が全然違うものですから……。

 イオンエンジンは学生のころからずっと20~25年作っているものなのでプロフェッショナルだと思っていますが、カプセルの回収はまったくの素人(笑)。とにかくすべてが初めてのことなので、その手続きを準備することで手いっぱいですね。このあともどうなることやらさっぱりわからないので、なんか本当に、不安、不安だけです。

かつて彗星のチリを採取したスターダスト計画も、ウーメラ砂漠にカプセルを着陸させた。「はやぶさ」のカプセル回収にあたっては、スターダスト計画に参加したNASAスタッフも協力のため待機する

安部 國中先生には非常にご迷惑かけてしまって(笑)。通関とか検疫とか難しい法律の手続きを、先生が一手に引き受けている状態です。

 我々はあまり気にしないで、オーストラリアに落ちたカプセルをこういった制限のなかで持って帰りたいと要望を出すんですよ。たとえば、直行便でできるだけ早く持ち帰りたいとか、地球の大気に触れさせたくないのできれいな窒素のガスで封入して、場合によってはガスを流し続けながら帰りたいとか。これはあきらめましたが。

 それだけでなく、回収したカブセルにオーストラリアの土が混入して訳がわからなくなる恐れもある。そこで土も参考として持って帰りたいなんていうリクエストもある。すると、土は検疫の問題があるので、特別な許可をもらうわけです。

 さらに民間機でいくつもの空港を経由しながら行くと、高度の変化に伴って、気圧の変化で箱の中の空気が呼吸しちゃう。それはよくないのでできるだけワンフライトで行きたいということで直行便を手配する。

 しかも民間空港から飛び立つと回収地点から距離があるので、ウーメラにある空軍基地から飛び発つわけです。普通の出国手続きはできないところですから、オーストラリアの通関の方に来てもらう。そんなお願いまでしてるんですよ。それを國中先生が前面に立って手続きや交渉を行なっているわけです。國中先生がいなかったら何もできないです。非常に感謝しています。


はやぶさのカプセルはちょっとした浦島太郎なんです

イオンエンジン開発担当 國中均教授(提供:JAXA)

國中 意外なことに、「はやぶさ」の再突入カプセルは、輸出入扱いになっちゃうんですね。日本からロケットで打ち上げて、法律のない宇宙に飛ばして、それがある日突然、オーストラリアに輸入されるんです。

 で、オーストラリアで手続きをして、もう一度日本へ飛行機で輸出入する。宇宙経由の輸出入というのはほとんど前例がない上に、出発したのは7年前(笑)。宇宙に行っちゃったきりならいいんですけど、なんだか浦島太郎みたいなことになっちゃうんですよ。

 矛盾点がたくさんあってなかなか整合がとれないんです。それをなんとか矛盾がないように理由や理屈をつけて、法を順守するように焼きなおさないといけない。それってすごく難しい。僕らはそのプロフェッショナルではないので……。その整合性を調整する膨大な仕事がある。役所に行って、説明して、向こうの役所の理解をこちらも勉強しないといけない。

 結局はどんなことなのか、我々も実際にやってみないとわからないようなこともあります。日本には、特殊品として再輸入します。手続きの時間も膨大にかかりますね。カプセル自体は、貴重な科学の材料を含んでいるので、一分一秒を惜しんで日本に持って帰ってくるように手続きしてますけど、本当にわかりません。やってみないと。

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