このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

Windows Serverで学ぶサーバOS入門 第22回

分散ファイルシステムを理解しよう

DFSでファイルサーバの弱点を克服

2010年06月29日 09時00分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク株式会社

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

DFS(分散ファイルシステム)の実力

 DFSが構成できたので、簡単なテストをしてみよう。リスト2は、100MBのファイルを作成し、コピーするバッチファイルだ。バッチファイルを実行中に、ネットワークトラフィックをWindows Serverに付属しているパフォーマンスモニタで計測してみた(画面18)。

リスト2●DFSの実験用バッチファイル

画面18●DFS評価実験の結果(ネットワークトラフィックの変化)

(1)コマンド1:DFS-Rによる複製

 新しくファイルを作成し、DFS-Rによる複製を発生させた。FSUTILコマンドで作成したファイルは中身が全部ゼロなので、十分高い圧縮効果が得られる

(2)コマンド2:XCOPYによる複製

 同じファイルをXCOPYコマンドで複製パートナーにコピーしてみた。画面18-(2)でわかるように明らかにネットワークトラフィックが増加している

(3)コマンド3:ローカルでの複製

 今度は、ローカルディスク上でコピーしてみた。コマンド1と同じトラフィックが発生するはずだが、ほとんどグラフに現われていない。DFS-Rはフォルダ内のファイルを64KBごとのブロックに分割し、それぞれのハッシュ値を保持している。同じハッシュ値のファイルが作成された場合は、同じファイルが作成されたと判断し、ファイル情報だけを複製パートナーに伝える。これにより、複製時間をほぼゼロに抑えることができる

DFSの利用

 このように、高速で堅牢なファイル複製が可能なDFSだが、欠点もある。それは、ファイルの排他制御が事実上行なわれていないことだ。そのため、複数のサーバで同時にファイルを編集した場合は、最後に保存したファイルが複製される。競合を起こしたファイルは、隠しフォルダに格納されるため、手動で取り出すことは可能だ。しかし、部分的に異なる2つのファイルを統合するのは至難の業だ。あまり当てにしないほうがよいだろう。

 DFSが力を発揮するのは「ブランチオフィス(地方拠点)」だ。地方には地方独自の営業施策があるだろう。そのために、さまざまな文書をファイルサーバに保存する。しかし、地方拠点にはシステム管理者がいないことが多く、バックアップ体制も弱い。そこで、DFSを構成してブランチオフィスのファイルを本社に自動複製し、本社でバックアップしてもらうのだ。この場合、本社でブランチオフィスの文書を編集することはないだろう。逆に、本社で作成した文書の参照にDFSを利用してもよい。こちらは逆にブランチオフィスで本社の文書を編集することはない。

 こうしたことからDFSは、十分な管理体制を維持できない地方拠点に最適なファイルサーバソリューションといえるだろう。

 本記事は、ネットワークマガジンにて掲載していた連載をまとめたものです。連載の一部は弊社刊行の書籍「Windows Serverマスターガイド」にも収録をしております。

■Amazon.co.jpで購入

 また、月刊アスキードットテクノロジーズでは、2010年3月号より本記事の執筆者である横山哲也氏による連載「Windows Server 2008 R2運用テクニック」を掲載しております。最新のWindows Serverの情報に関しましては、こちらもご覧ください。

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事