議論を呼んだ「お給料いくら?」
―― たしかに、賛否の幅がものすごいですね。信奉者とまでいえそうな人から、徹底した否定派まで。傍から見ててかなり興味深いです。
たぬきち 楽しいですよね。特に「文芸書は売れない」という話をしたときは、炎上といっていいくらいの騒ぎになりました(4月15日)。あのときが一番ページビューが伸びたんですよね。あと、僕の年収を公開したときもかなりすごかった。アクセス数をみようと思ったらカウンターが止まってて、サーバーも一時パンクしたみたいで(笑)。
―― 賛否の反響も、自分の年収もすべてさらしているというところに凄みを感じます(4月10日)。おつとめの会社が内部で混乱している様子もリアルに描かれている。ここまでやるには、内部からの批判を受ける覚悟が必要だと思います。やはり、初期のころからそういう覚悟はあったんですか?
たぬきち 3~4日目にバレる怖さを感じて、5~6日目には「バレてもしょうがねえか」と思うようになりましたね。それに、自分が書いていることは機密情報でも何でもなくて、普段同僚とやっている雑談くらいの内容なんですよね。さらしてはいけない内部情報などではないと思っています。でも「業界の内側を暴露」みたいに言われたりして不思議でした。「何でこんなことで暴露とか思うの?」って。まあ、給料の件は個人情報で、あれを出したときは「俺って会社のみんなに迷惑かけたかな」と思ったけど。
―― 同じ会社の後輩と思われる方から、かなり辛辣なコメントがつきましたね(4月23日)。「あなたは辞めるからいいでしょうが、残った僕らの立場はどうなるんだ」という。
たぬきち あのコメントで吹っ切れたんです。「給料の額とかさらされて迷惑している。取引先にも信用なくす」と書かれたときに「ああ、やってよかった」と思いました。だって、こんなことで信用なくすわけないんですよ。そういう取り越し苦労をしている社員の肉声がコメント欄についたというのは意味があったと思います。
給料の件は、前から「出版業界がヤバいのは社員の給料が高いからだ」みたいなことを言われていましたが、なんで当事者は誰も何も言わないんだろうと思っていたのがあるんです。使命感のような高尚なものではなく、「誰も言わないなら俺が先に言っちゃえば、ウケるだろうな」というノリですが。それを言及するときにちゃんとした数字を出さないと論議にならないでしょ。だから、ひとつのサンプルとして自分の情報があるから、それを提供しようとなったわけです。そもそも仕事やめるし。仕事しながらだったらやっぱりきつかったでしょうね。そういうことはできなかったと思います。
―― ただ、そうなると、同じ給与体系で今後も仕事を続ける会社の人は、同じキツさをこうむることになりますよね。
たぬきち 「お前らがやらないから俺が代わりにやってやるよ」みたいなおこがましい気持ちと、「悪いね」という気持ちが同居しています。そこはまあ先ほど言ったように、公開してまずい情報はなにも出していないという考えがあるから、あまり深く考えていないですね。
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