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操作の手間を省くと実用度は雲泥の差になる

生みの親が語るNetWalkerの正体

2010年06月07日 06時00分更新

文● 古田雄介

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コンシューマー向けながら、法人用途も想定した戦略

 もうひとつの導入メリットは価格だ。Z1は3万7000円前後、T1は4万7000円前後と、どちらもネットブック並の価格帯となっている。個人でも買いやすいが、この値段のまま法人展開も行っているのが特色といえる。一般的に、法人向け端末は契約企業へまとまった数量を販売する。そして、故障した端末を新品に交換するなどのサポートサービスを長期間に渡って提供するため、導入にかかるコストは最小単位でも高額になる。それがNetWalkerなら、個人で買うのと同様に数万円単位から計算できるのだ。その代わり、法人側は導入した端末がいつ生産終了になるのか読めない。

サンプルの保険会社のプレゼン資料を披露してもらった。プレゼンファイル内の電子署名欄に、ソフトキーボードや手書き入力でサインを入れられる

 それでも、NetWalkerを導入している学校や、導入を検討している法人は増えているという。これまでも、Linuxの授業向けに生徒の人数分のZ1を導入した亀山高校や、外回りが不可欠な営業用のツールとしてT1を提案中という。その背景には「いまは自社製アプリケーションやデータベースをブラウザー内で扱う法人さんが多いです。端末側に依存していないので、いくらでも代用が利くんですよね。新たに何か端末を導入するにしても、社内システムを一斉に取り替える必要はなく『試しに数台組み入れてみよう』という感じで、少量ずつ買っていただける環境ができてきました」という事情がある。

 そこで、小さいながらも1024×600ドットという解像度を備えて低価格という、NetWalkerが強みが際立ってくる。「一般的なビジネス向けパソコンとほぼ同じ解像度ですから、既存のシステムにNetWalkerを導入しても社内プログラムの画面設定をカスタマイズするといった手間は不要です。とりあえず、端末代だけ稟議書で通せば、あとは何の手間もいりません。基本構造はパソコンなので、USBメモリーでデータを既存のパソコンと共有したりもできますしね」

 なお、T1では、Z1とは別のアプローチで法人展開を仕掛けていくそうだ。「学校やオフィスで導入していただく場合は、キーボード付きのZ1が好まれますが、大きな工場の中や飲食店のホールなど、動いている環境で使うとなるとフルタッチ型のT1が有利です。画面をタッチするだけで必要な設計図を表示したり、画面のボタンを押すだけで注文を記録したりできますからね。また、営業ツールとしてもプレゼン資料に電子署名欄を設けて、商談をしながらお客さんに画面をタッチしてもらうといったこともスムーズにできるでしょう」

Ubuntu色はあまり出さずに、今後もZ1とT1で展開

 最後に、NetWalkerの今後の展開を聞いた。開発初期に候補に挙げられた端末の形状は、クラムシェル型とフルタッチ型、スライダー型の3種類。前の2つはすでに製品化している。第三弾は、やはりスライダー型になるのだろうか。笛田氏は「当面は現在の2モデルで十分じゃないかと思っています。とくにT1の手書き入力機能でブランドのビジネスチャンスが広げられると思うので、現行製品で『何ができるか』をもっと提案していくカタチで進めていく予定です」と首を横に振る。

T1の手書き機能。まっさらな状態からデジタルメモを残す使い方もできる

 また、第一弾のZ1も今のところは後継機の予定がないという。年に3回ペースでモデルチェンジするパソコン市場とは、一線を画すロードマップを敷いているのだ。「一般的にパソコン業界は、インテル製CPUを含めて、新しいパーツやOSの登場にあわせてモデルを切り替えていくという流れになっています。しかし、NetWalkerが採用しているパーツやOSは、Z1当時のものが今でも最新版なんですよね。そういうこともあって、従来のパソコンとは異なった進化を進めていくことになるでしょう。なので、今後はUbuntu色やハード面での特徴はあまり前面に出さずに、NetWalkerでやれることを増やすことで、新鮮味を保っていこうと考えています」

 ちなみに、それは電子ブック機能の拡張という方向ではないらしい。「T1の特徴のひとつとして電子ブックビューワーも搭載していますが、こればかりは世の中の流れをみて対応していくしかないでしょう。我々も、T1を通してそういうソリューションを広めていく側ということで、現在以上の動きはしないと思います」

 プロジェクトチームが計画している新しい提案はまだ表に出てきていないが、NetWalkerは今後も独自路線を継続しつつ積極的に展開していく。少なくとも、笛田氏は「私としてはこのジャンルはずっと続けていきたいと思っています」と明言している。NetWalkerの新しいニュースに期待しよう。

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