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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第48回

iPad 3G版の日本向け製品版をいち早くテスト!

2010年05月26日 00時01分更新

文● 西田 宗千佳

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NTTドコモ系のSIMは使えないが
海外では現地のSIMを利用可

 「iPad日本版はSIMロックがかかっている」ことが大きな話題となったが、やはりNTTドコモ系のSIMは利用できないらしく、日本国内では「ソフトバンク限定」のロックがかかっているそうだ。アップルおよびソフトバンクに確認したところ、「日本以外の国では、現地のSIMを利用できる」という。

 ソフトバンクも7月末以降に、「主要国でのパケット定額通信」を実現する予定だというが、現状では価格体系などが公表されていない。日本版を海外で使う際には、場合によっては低価格な現地キャリアのSIMを利用した方がいいだろう。筆者も6月に長期間の米国出張を予定しているので、AT&TのプリペイドSIMを利用してみようと考えている。

 なお、3G版とWiFi版の違いはほかにもある。もっとも大きいのは「GPSの有無」だ。GPSモジュールは3G通信機能に内蔵されているらしく、3G版のみに搭載されている。WiFi版も無線LANアクセスポイントの位置を使った測位には対応しているのだが、やはり精度は3G版の方が高い。

iPadでのストリートビュー

iPadでのストリートビュー。縦に表示できるので、建物の外観を含めた正面視界の様子が見やすい

 当然、一番有効なのは「マップ機能」での利用だろう。表示範囲が広く見やすいので、まさに地図帳感覚だ。ただし、iPhoneの方がサイズが小さくて持ちやすいので、携帯ナビとしてはそちらの方が使いやすいと思う。逆に「iPadの方がいいな」と思ったのは、「ストリートビュー」の表示だ。画面が大きくなると妙に迫力が出て面白い。また、iPhoneでは「横画面」でしか表示できないのだが、iPadでは「縦画面表示」もできるため、目の前の風景が確認しやすく感じた。

 また、iPhone向けに作られたソフトの中には、GPSのないWiFi版iPadでは動作しないものがある。例えばGPSで放送エリアを確認する「radiko」は、WiFi版にはインストールできない。こういったアプリは要注意だ。

GPSを利用する「radiko」はダウンロードできない

WiFi版ではこのような表示が出て、GPSを利用する「radiko」はダウンロードできない。パソコンからの転送もできない

 気になる通信速度だが、今回はMicro SIMによるソフトバンクの3G回線に加えて、日本通信のモバイルWiFiルーター「b-mobile WiFi」と1年間定額方式の「b-mobile SIM S300」の組み合わせ、さらにUQ WiMAX回線+NECアクセステクニカのモバイルWiMAXルーター「Aterm WM3300R」の3種類でチェックしてみた。場所は東京都大田区および港区の複数地点である。計測にはAppStoreで無料配布されている「Speedtest」というアプリを利用した。

内蔵3G回線を使った速度

内蔵3G回線を使った速度計測の例。ダウンロード速度は意外と速い。ただしばらつきも見られるので、環境による差は大きそうだ

UQ WiMAXを使うWiFiルーターでの速度

UQ WiMAXを使うWiFiルーターでの速度。元々回線速度が速いので、結果も当然良好。ただし携帯電話ほどエリアは広くなく、室内浸透度でも劣るので万能ではない

b-mobileのSIMと「b-mobile WiFi」を使った場合の速度。下り最大300kbpsのサービスなので、速度はさほど速くない。しかし速度やレイテンシーのばらつきは、ほかより少ない。エリアももっとも広いと予想される

 数字だけを言えば、やはりスペック的に有利なWiMAXに軍配が上がる。だがソフトバンク回線も、意外なほど通信速度は良かった。最低でも下りで1Mbps程度は出ており、快適と言っていい。どちらも今回は極端な混雑や電波の弱さは感じられなかったが、「東京都内で条件の良い場所であったから」という可能性は否定できない。ソフトバンク回線の場合、上り速度が80kbpsから200kbps、レイテンシも120msから1000ms(!)と、ばらつきが大きかったのも気になる。

 他方、元々下り上限300kbpsの制限が課せられている日本通信のb-mobile SIMは、速度面で見劣りするが、どこでもほぼ同じ上り・下り速度が出て、ばらつきはほとんど見られなかった。またウェブを見るだけならば、数字ほどの差を感じなかったことも事実である。レイテンシーは時折500ms台に乗ることもあったが、おおむね100~200ms程度で安定していた印象だ。「速度は低いが安定した回線を安価に使える」のが日本通信のサービスの特徴といえる。

 またWiFiルーターを使うメリットとしては、「iTunes Storeを制限なく利用できる」という点も指摘しておきたい。3G回線の場合、回線の混雑緩和を目的に音楽や大規模アプリのダウンロードは禁止されているが、ルーター経由ならばあくまで「WiFi扱い」なので、この制限を受けない。もちろん、無制限に行なうのは共有物である回線に無用な負荷を与えるので節度が必要だが、利用者としては「便利」と感じるのも事実だ。

 しかし、ルーターとiPadの両方のバッテリーを管理するのはやはり面倒ではある。回線選択や利用体系の自由と面倒を天秤にかけることになるだろう。


筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)。


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