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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第48回

iPad 3G版の日本向け製品版をいち早くテスト!

2010年05月26日 00時01分更新

文● 西田 宗千佳

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ソフトや入力の環境は「まだ未整備」だが
ノート代替の可能性はきわめて高い

 他方、やはりiPhoneベースであるがゆえの難点も存在する。最も大きいのは「環境が整っていない」ということだ。例えばタイプ速度は十分なのだが、全角スペースが入力できない、全角/半角の変換がしづらいなど、「日本語入力の操作」が練られているとは言い難い。iPhoneでの制限を引き継いでいる部分が多いのだが、モバイルノート代わりに使うなら気になる。

 iPad用ビジネスアプリケーションであるワープロソフト「Pages」、表計算ソフト「Numbers」、プレゼンテーション作成ソフト「Keynote」は、それぞれ十分に高性能ではあるが、Mac OS版やMicrosoft Officeとの「完全な互換性」を持ち合わせているわけではない。また、シンプルなテキストファイルを読んだり、作ったりするのも難しい。そもそもiPadではユニコードベースのテキストが基本で、日本で広く使われている「シフトJISベース、改行コードはCR+LF」というルールには対応していない。

 メールやウェブを基本に使い、ファイル形式としてもdoc形式やPDFをベースにするなら問題とはならないが、完全にパソコンを置き換えるには厳しい。「明日から仕事用のモバイルノートをiPadにするか」と言われると、やはり「No」である。

ワープロソフト「Pages」

ワープロソフト「Pages」(1200円)。横書き専用ではあるが、かなり凝ったレイアウトの文書も作成可能。企画書やチラシなどの作成には威力を発揮しそうだ

表計算ソフト「Numbers」

表計算ソフト「Numbers」(1200円)。グラフの美しさなどは特筆に値する。巨大なシミュレーションを行なうより、家庭内での作表や集計に向いている

 ただし、これらの点は「ソフト」で解決できるのもまた事実だ。OSのアップデートによって、文字入力関連の機能が改善される機能は高いし、より高性能な「アプリ」の登場で対応も可能だ。特に、「日本のテキスト利用慣習に則ったエディターアプリ」が登場すれば、ヒットすることは間違いないだろう。ライターという仕事だけで言うなら、優秀なエディターの登場だけでも環境は激変する。逆に言えば、iPadとモバイルノートを隔てているのは、その程度の差である。

 そもそもiPadでは、iPhone以上に「独自キーボード入りのソフト」の開発が推奨されているような印象を受ける。Numbersには数字や日付などを入力するためのカスタムキーボードが搭載されているし、AppStoreではキーボードを左右分割したり回転させて使える「Keyboard Upgade」「Keyboard Fix」といったメモアプリも販売されている。

 WindowsのようにIMEを入れ替えることはできないが、エディターやワープロなどのiPad用アプリのベンダーが、オリジナルの変換プログラムやキーボードを搭載したアプリを開発して販売する、といったことは今後増えそうだ。事実、ジャストシステムはiPhone向けとして、ATOKを組みこんだアプリケーションの開発を表明しており、それがiPad向けにも登場する可能性はある(いまだ詳細は不明ではあるが)。

iPad用メモアプリ「keyboard Upgrade」

iPad用メモアプリ「keyboard Upgrade」(115円)。左右分割できる「カスタムキーボード」を搭載したアプリ。実用性はちょっと疑問だが、こんなアプリも作れる、という実例としてご紹介

 もちろん、指での操作を生かした「まったく新しいアプリ」の可能性も感じる。前出のPages、Numbers、Keynoteの3点を使うだけでも、指を操作に生かすともっと新しい、便利な操作を実現できることが見えてくる。iPhoneでは携帯向けのコンパクトなソフトの登場が目立ったが、iPadではよりパソコン的な「本格的なソフト」が期待できる。PC市場でなかなか新しい市販ソフトが成立しない昨今、こうした「環境が生まれていく楽しみ」を体感したいなら、iPadを無視するのはもったいない。


日本版には「技適」マークあり
ソフトバンクSIMは「ばらつきはあるが速い」

 冒頭で述べたように、今回使っているのは「日本版」のiPad WiFi+3Gモデルである。「日本版」と強調する理由は、日本で無線LANやBluetoothで通信するために必要な「技術基準適合証明」(いわゆる技適)の問題をクリアした製品である、という点だ。ご存じのように、技適の表示がない無線機器を日本国内で使うことは、本来なら違法にあたる。これまで報道されることの多かったiPadはアメリカ版なので、当然技適の表示はない。

 だが、今回入手した日本版には技適表示がある。「ソフトで表示になるのでは」と言われたこともあったが、結局は従来どおり、本体の背面に技適表示が刷り込まれる形となった。パッケージなどの表記も、もちろん日本語だ。一方で、本稿執筆時点ではiPad用OSのアップデートは行なわれていないので、今後ソフト側で技適表示が行なわれるか否かは不明だ。

技適ロゴが刷り込まれている

日本版iPadの背面には、技適ロゴが刷り込まれている。日本で利用してもまったく問題ない

 3G対応版であるので、パッケージにはソフトバンクのMicro SIMカードが付属する。iPhone用のSIMは黒だったが、iPad用のものは「白」だ。

3G版で利用するMicro SIMカードは白

3G版で利用するMicro SIMカードは白。内部に差し込んで利用する

 iPad側にも、WiFi版とは異なり、3G通信の設定項目が追加されている。実際に触ってみれば分かるが、通信用の「APN設定」もはっきりと記載されている。ここでその詳細を明かすことはしないが、実際に触って確かめてみていただきたい。

3G通信網を利用するための設定項目

iPadの設定画面。3G版の場合、3G通信網を利用するための設定項目が追加されていることに注目

 なお3G版の通信プランには、データ定額制とプリペイドの2通りが存在するが、iPad内にはプリペイドプランをチャージするためのメニューも用意されている。契約時に設定する「暗証番号」を入力してチャージする仕組みになっていた。

プリペイドプランの追加チャージは……

プリペイドプランの追加チャージは、「設定」の中から行なうようになっている。チャージには暗証番号が必要だ

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