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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第117回

「光の道」より「電波の道」を

2010年05月26日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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新幹線は自動車の代わりにはならない

 原口一博総務相の「光の道」構想に対して提案されたソフトバンクの「アクセス回線会社」構想は、大きな反響を呼んでいる。ツイッターでは多くの人が(原口氏やソフトバンクの孫正義社長も含めて)#hikari_roadというハッシュタグで議論し、ブログや「アゴラ」でも論争が続いている。5月13日には、5時間以上に及ぶUstream中継が行なわれた。

Twitter上でも活発に議論が行なわれている

 これまで通信インフラの問題は技術的でわかりにくいため、通信事業者やメーカーと総務省の交渉で決まることが多かった。しかし安くて使いやすい通信インフラを提供することは、すべての国民の生活にかかわる問題であり、経済政策としても重要である。通信政策がこのようにオープンな場で討論されるようになったのは、日本の民主主義にとってもいいことだ。

 しかし第115回のコラムでも指摘したように、ソフトバンクの案には疑問が多い。最大の問題は、孫正義氏が「無線の帯域が足りない」と強調しながら、光ファイバー(FTTH)の全世帯への敷設という政策を提案していることだ。今回の提案では「国内無線通信量が10年で1000倍になる」という予測を根拠にし、周波数の割り当て(3倍)と技術進歩(3倍)では「わずか10倍」にしかならないので、残りを光ファイバーで補うという論理になっている。

 これはまるで「自動車の輸送量が1000倍になるが、道路の幅は10倍にしか増えないので、新幹線を全国に引け」といっているようなものである。自動車の最大の特長は、軌道のない所へ自由に行ける点にあるので、新幹線がいくら速くても自動車の代わりにはならない。人々が無線を使う理由は、どこでも使える自由さにあるので、FTTHがいくら速くても、iPadで使うことはできない。

 たしかに伝送速度という尺度だけで考えると、次世代のブロードバンド無線に比べてもFTTHのほうが速い。また携帯端末の利用の40%が室内だから、その部分だけでも「フェムトセル」とよばれる小さな基地局を介して固定ブロードバンド回線に流せば、基地局の負荷が軽減できる効果はある。しかしDSLなどのモデムにはすでに無線LANのカードがついており、フェムトセルがどれだけ普及するかは疑問だし、そのバックボーンは光でなくてもDSL(デジタル加入者線)で十分だ。

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