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このコラボがすごい! ボカロ人気曲「ARiA」の舞台裏

2010年06月05日 12時00分更新

文● 広田稔

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一流のプロに「無茶ぶり」できる制作環境

── 実際の制作についてお聞きします。プロデューサー的な立場で「ここはこうして!」といったような指示は出されたんですか?

toku SPiCaが受けたこともあって、星系の歌がいいんじゃないかと考えていたところはありました。星ネタは好きですし、書きやすいというのもあったので、シリーズにしたらいいのかなとコンセプトに決めたんです。でも各人の演奏については、特にガイドラインは設けていませんね。

ORYO ベースに関しては、完全に自由だったんですよ。「何か決まりごとはありますか?」って聞いたら「自由にやってくれ」って。ルートの音だけ外さないようにして、あとは全部作っています。宅録だったんですが、曲が曲なので楽しくなって、家なのにストラップで(肩に)かけてライブのように弾いていたという(笑)。

sleepwalker 実は音源をもらったあとに、コード譜があることを知ったんですよね(笑)。送る前に音源が返ってきてしまって、「あれ!?」みたいな。

ORYO 先に下さい(笑)。


── そんな丸投げな作り方でも大丈夫なんですか?

toku コード譜がシンプルで、どんな音を乗せても基本的には大丈夫な展開に作っているんです。その乗った音で色が変わっていくという曲にしたかった。打ち込みで入れる楽器の雰囲気は全部入れてましたから。


── 「この部分ではこの楽器を目立たせよう」という味付けは、どの段階で決めているんですか?

toku 上がってきた音源をミックスするときです。アレンジャーでバンドの収録をするとき、最初にコード譜と「ここでせーので合わせます」って決めごとぐらいしかミュージシャンに伝えないときもあるんです。だからあまりプロの現場と変わっていないかも。

 みんなでスタジオに入って収録したのなら、「はいもう1回」って納得いくまで録ってクオリティーを上げられますよね。でも、今回は顔を合わせない分、自分もそれをがんばって解釈しようとするまとめ方でした。予想外のフレーズが来たときは、それがよければほかの音とどう調整するか考えますし、悪かったらどう直すか提案するという。


── 映像はどうやって作っていたんですか?

sleepwalker かなり無茶ぶりが多かったです。仕事だと「仕事相手」って感じでやりとりすることも多いですが、refeiaさんと木緒さんとは仲間だった。友達の一流クリエイターに、予算を度外視して発注できる状況だったんです。

 例えば、木緒さんには、曲が始まる前に出てくるふたつのロゴを作ってもらいました。ガチのデザイナーが、ガチでロゴを2つ作ったんですよ。

木緒 僕は最初に出てくるARiAのロゴがメインタイトルだと勘違いして、かなり悩んで作ったんですよ。素材を渡したら「メインのロゴは別にある」っていわれて(笑)。

「かなり無茶ぶりが多かったです」


── ひどい(笑)。

木緒 でも、すりーぷさんはムービー全体を見て構成を作っているわけで、何も考えずに発注するわけがない。結果的に自分が作ったロゴもやっぱりあったほうがよかった。

sleepwalker あとは2コーラス目のサビが終わったところで盛り上がるシーンがほしいなと思って、僕が先に3Dモデルで仮の場面を作ったんです。そして、木緒さんに「ここにアイコンとウィンドウをいっぱい出します」って振ったら……。

木緒 調子に乗って受けちゃったんですよね。打ち合わせがすごく盛り上がって、思わず「このいっぱい出るアイコン、全部違う形だと面白いですよね」といってしまって、結局、アイコンを5個、ウィンドウを30個、別のデザインで作ることになってしまった、

sleepwalker 10秒くらいのシーンのうち、アイコンやウィンドウが出てくるのは3秒くらいなんです。しかも割と遠くにあるので、普通に流していると「何かウィンドウがあるな」ぐらいにしか思わないんですが、よく見るとひとつひとつにストーリーと関係した意味が込められている。この細部を作り込んでおくと、映像全体で見たときに説得力が出てくるんですよね。

アイコンやウインドウが出まくるシーン

木緒 実際、使い回してるって分かると何か嫌じゃないですか。そう考え始めると、収まりがつかないですよね。

sleepwalker そのあとも、途中で素材が足りなくなったら木緒さんに電話して「こういうのが足りないからお願いします!」って頼むという(笑)。


── 仕事でのクリエイティブって、事前に作るものを決めますよね。あとから追加するときは割と遠慮がちに頼むとか……。

sleepwalker それは予算やスケジュールがあるから、あとあと困らないようにきっちり考えて発注しますよね。でも前もって決めていないと「投げ放題」になる。


── 投げ放題って(笑)。

sleepwalker もちろん最初にコンテは書いてるんですけど、あとから足したくなってしまうところが出てくるんです。木緒さんも「何でもいってくれ」って言われていたので。

木緒 やっぱり、やるんだったらとことんやらないと。それは、すりーぷさんのデモ映像を見て、「この人、すごいものを作るわ」って思ったからなんです。自分のつくったものが数倍になって生かされることが分かってたから、それが見たかったんです。

sleepwalker 自分とこの人がコラボしたらどうなるんだろうってところがありますよね。



(次ページに続く)



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