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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第71回

「個人サイトは変化すべき」カフェオレ・ライターの流儀

2010年05月10日 12時00分更新

文● 古田雄介

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すべては「侍魂」から始まった

―― では山田井さんにお話を伺います。サイトをはじめたのは2001年ですが、そのきっかけを教えてください。

山田井 ベタなんですけど「侍魂」です。当時はまだ大学生で、友人たちに内緒でそういうテキストサイトをたくさん読んでいたんです。それで自分でも書いてみようと。ぼくは大学まで地方にいたんですが、まわりではまだインターネット自体が特殊な人間のやるものだという空気がありました。みんな講義のレポートの調べ物に使ったりはしていましたけど、個人サイトを見て楽しむということがメジャーではなかったんですよ。だから、サイト運営中も隠れてコソコソといった感じでしたね。

 たぶんそのころは侍魂に影響を受けて(サイト運営を)始めたという人は多かったと思いますよ。その影響で、今でもぼくはブログ化せずにタグを手打ちしていますし。

山田井ユウキ氏。大学を卒業後に東京で就職し、2009年までは会社員として働いていた。「就職するとサイトの更新が大変になるとよく言われていましたが、ぼくは幸いそんなことなかったですね。ライターとの兼業はちょっと大変でしたけど」という。現在はライター一本で生計を立てている。会社を辞めたいきさつは前回を参照

―― コンテンツとしては、最初は映画レビューがメインだったんですよね。

山田井 ええ。もともと映画をよく観ていたので、レビューというか感想を書きつづることが多かったんですよ。ですが、サイトをやっていくうちに興味の範囲が広がっていって採り上げるジャンルが増えていきました。

 漫画やボーイズラブなどですね。そういうコンテンツをたくさん扱っていると、サイトに訪れる読者の層も変わってきます。そうなった状態で映画のことを書いても「今来てくれている人向けじゃないな」と感じるようになって、だんだん減っていったんですよ。

―― 確かに時代によってサイトのカラーがかなり変わっていますね。

山田井 主観的な分析になりますけど、大きく分けると3つの時期がありました。映画が最初で、次が漫画、その次がボーイズラブを採り上げた時期です。映画の頃はまだ全然アクセス数は伸びていなかったですね。「ちょっと読者が増えてきたな」と思ったのは、漫画をネタ的に批評するようになってしばらく経ったころです。特にきっかけがあったわけじゃなく、徐々に、という感じですね。

 それで、あるときからボーイズラブ本の帯ネタを扱うようになったわけですが、ここでアクセス数というより読者層の大きな変化が起きました。それまで男性中心だったのに、男女比が一気に逆転したんですよ。これは完全にコンテンツのせいですね(笑)。

―― 現在読めるコンテンツは漫画系とボーイズラブ系が多いですね。逆に映画レビューはわずかしか残っていません。2005年7月以前のコンテンツは削除したと書いてありましたが、それはどんな理由からでしょう。

山田井 削除したといいますか、今は引っ込めている状態ですね。特に問題があったわけじゃないんですが、自分で過去に書いたものを読んでいて「違うな」と感じたのが大きいです。当時は面白いと思って書いた言い回しや言葉のチョイスが、今読むと楽しく思えないということですね。

 ぼくは扱うコンテンツと同時に、文章の書き方も変わっていたんですよ。それで、漫画ネタを扱い出したあたりでなんとなく読者受けする書き方がつかめてきた。でも、それは当時の読者に対してであって、現在の読者のニーズはまた違うんじゃないかっていう。

 ただ、趣味嗜好は変わっていなくて、当時好きだった映画や漫画は今も好きですし、もしかしたらもう一度書き直すこともあるかもしれません。

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