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ゼロからはじめるバックアップ入門 ― 第1回

大切なデータを守る術を知ろう

バックアップはなぜ必要なのか?

2010年05月27日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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バックアップは「障害に備えた保険」と捉えられることが多いが、最近では別の観点での必要性も高まっている。また、インターネットやWebの利用が高まるにつれ、以前とは要件や利用形態が変化している。本連載では、最新状況も織り交ぜながら、初心者にもわかりやすくバックアップを解説していく。

バックアップはなぜ必要か?

 仕事でも日常生活でも、コンピュータやネットワークシステムは非常に身近な存在になった。そのため、企業ではさまざまな業務がシステム化され、大量の情報がデジタルデータとして保存されるようになった。紙の文書が火事や水濡れや虫食いで失われるように、コンピュータ内に保存されたデジタルデータもまた、ハードウェア障害や操作エラーなどの人為的なミス、さらにはコンピュータウイルスなどにより簡単に失われる可能性がある。

 紙の文書に比べると、デジタルデータは膨大な量の情報が場所を取らずに保存できるというメリットがある一方で、ほんのちょっとしたトラブルで大量のデータを一瞬にして喪失しかねないデメリットもあるわけだ。

 データを失えば企業活動にダメージを受けるのだから、データの保護は真剣に考えなければならない。たとえば、納品データや売上データが消えたら、請求書の発行ができず、代金の回収が困難になる。それでは原材料の購入や賃金の支払いに支障を来たしてしまい、企業の存続すら危うくなるかもしれない。

2009年10月には、マイクロソフトの子会社でユーザーデータの喪失事故が発生。この事故では、ユーザーに被害を与えただけでなく、ブランドイメージも傷ついた。

 そこで、消えては困るデータを、コンピュータの外部に退避するバックアップが必要なのである。コンピュータシステムの運用管理者の間では「論よりバックアップ」とか「転ばぬ先のバックアップ」という格言があるくらい、バックアップは重要視されている。

 一般には、データベースやデータファイルに格納された情報(いわゆる「ユーザーデータ」)を「データ」と認識することが多いが、バックアップの対象となるデータは、コンピュータの記憶領域に格納されたすべてのビット列を指す。すなわち、OSやミドルウェア、業務アプリケーションのプログラム、およびそれらの設定・制御情報までが含まれる。これはコンピュータが故障した場合の復旧の手間を考えれば当然だろう。OSやプログラムなどをバックアップしなかった場合、まず、OSの設定やプログラムの導入作業を行なって、それからバックアップしたユーザーデータを復旧(リカバリ)する手順になる。

 業務用の大型コンピュータ(汎用機やUNIX/PCサーバー)の場合、OSの設定やプログラムの導入作業には丸一日から数週間かかることもある。これでは業務の再開まで時間がかかり過ぎてしまう。だから、OSやミドルウェアや業務アプリケーションもバックアップしておき、ユーザーデータと一緒にリカバリするという手順が必須なのだ。

保険としてのバックアップ

 バックアップの目的をひと言で表わせば、「コンピュータのデータを完全に保護すること」である。それでは、どのような事態に備えてコンピュータのデータを完全に保護しなければならないのか、いい換えれば「バックアップが必要とされる局面」を、具体的に考えてみよう。一般的な認識は、最初に書いた「データ消失に対する備え」、すなわち「保険としてのバックアップ」であろう。保険が必要な事象は、以下のように分類できる。

1.コンピュータのハードウェア障害

 データを失う原因として、まずコンピュータのハードウェア的な障害が考えられる。HDDなどの記憶装置(ストレージ)自体の故障、あるいはサーバーの電源異常などに誘発された記憶装置の故障といったものだ。コンピュータや記憶装置が盗まれたり、破壊行為によりコンピュータ(単体)が壊されるといった事象も含まれる。

2.ヒューマンエラー

 ユーザーの操作ミスにより、重要なデータを削除したり、上書きしてしまうことでデータが失われることもある。ソフトウェアのバグによりデータが消されてしまったというケースも(悪意がなければ)ここに含まれる。

3.クラッキング

 インターネットへの接続が一般化したことにより、ウイルスによるデータ化けや消失、クラッキング行為による論理的なデータ破壊などのリスクも増えている。ユーザーデータが改変されるだけでなく、OSやプログラムなどが改変され、カードの暗証番号などが漏えいするといった事例もある。クラッキングに遭った場合、システムをクラッキング前の「クリーンな状態」へ復旧する必要があるので、上記2つのケースとは異なるバックアップの手法が必要である。

4.災害

 地震、洪水、火事などの災害によりデータを喪失することもある。この場合、データセンターが崩壊してバックアップ用コンピュータやデータをバックアップした媒体までもが失われる可能性もある。そのため、復旧方法は上の3つのケースとは大きく異なる。特にDR(Disaster Recovery:災害復旧)と呼ばれる手順あるいは体制が必要となる。DRは、このような不測の事態に備えるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の主要な要素でもある。

(次ページ、「リカバリを意識する」に続く)


 

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