ブログを書くのは1分間、ライター仕事は2週間
―― 主観的なアンテナで勝負するというコンセプトがここでも生きているわけですね。ただ単純に興味本位だけだったら、これだけ膨大な記事を書く前に飽きたり、下調べなどの手間から逃げたくなると思います。それをおさえるには別の要素も必要かと思うんですが、武田さんのなかでそういったものはありますか?
武田 それははっきりしていて、僕の場合は、純粋に書くのが好きということに尽きると思います。ライターとしての記事もブログの記事も好きですし、小説やレポート記事を書くのも楽しいんですよ。だから、色々な媒体で記事を書かせていただいて、私生活の時間を圧迫しているときもありますけど、好きでやっているので大変な感じはないんですよね。
―― なるほど。ちなみに、自分のサイトと商業媒体で記事を書くときは何か意識的な違いがありますか? 工程だったり、想定する読者層の違いだったり。
武田 完成するまでの意識というか工程は違いますね。ブログでは面白いと思ったものを脊髄反射的にあまり考えずすぐアップしたりという感じなんですが、原稿料をいただいて書く場合は、構成を練ったり、書き上げたあとにプリントアウトして何度も推敲したりということをやります。「面白いサイトを見つけたよ。」はサイトのURLにコメントを添えるだけなのでほとんど1分もかからないのですが、商業記事は2週間かけたりしていますから。同じくらいの分量で比べても、やはりスピード感が全然違いますね。
ただ、読者層はどちらもあまり意識していないので変わらないと思います。あえていえば、社食の記事は普段から社食を利用している人に向けて書いているというのがありますね。
山田井 僕の場合、自分のサイトでも早くて30分、長いと2~3時間かかってしまいます。でも、単位時間でいえば、やっぱりライターとして書くときのほうがちょっと時間をかけていますね。読者層に関しては僕も特にないです。ライターとしても、編集の方が僕の色を気に入ってくださってというところからスタートしているので、ある意味意識的にサイトと同じような感じで好き勝手に書かせてもらっています。これが無記名の記事だったら勝手が違うと思いますけど。
―― 逆に言えば、レイアウトや文字数の指定といった条件が加わる大変さみたいなものはあまり大きくないんですね。
武田 ネットの文章に関してはそうですね。そこはすごくやりやすいと感じてます。僕の場合、「ここに写真を入れてください」とか「この文とこの文の間に入れてください」といった注釈を入れて原稿を納品するくらいなので、そんなに手間が増えたり専門知識が必要だったりする経験がないんですよ。今ある知識だけで、思い通りの構成を作ってもらえるという。
―― たしかに、ネットの記事だと構成の自由度は高いですよね。サイト管理人さんがライター仕事をする場合の難易度がグッと低くなる気がします。
武田 そうですね。あとは、ネット自体もライターにとってかなり有利なツールだと最近実感してます。お仕事をもらう場合も、出版社に出向かずにメールでやりとりして完了する場合もあるじゃないですか。さらに最近は、取材の正式なアポイントメントの前にTwitterで連絡を取り合ったりすることも出来ますし、机の前にいながら仕事を順調に進められる環境が充実してきたと感じています。
山田井 仕事もそうだし、Twitterでネット自体が変わった気がします。僕は自分のサイトをずっとHTMLで書いているんですが、ブログが登場したときにすごい時代が来たなと思ったんですよ。専門知識のない誰だって上等なプラットフォーム上で情報発信できるようになったと。そしてTwitterで、コミュニケーションの距離が大幅に縮まったんですよね。武田さんがおっしゃったみたいに、仕事にも活用していい空気感があります。
(顔の見えるインターネット 第71回に続きます)
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