インタビューを終えて
「電子出版」というインパクトと「出版不況」がセットで語られることが多いが、星野氏の見立てによれば、それとは異なる状況が見えてくる。ここで整理してみよう。
・電子出版の到来以前に、特に雑誌においてメディアとしてのニーズが根底から問われる状態になっている。一方、書籍の消費はここ数年大きな変化はないが、いずれも書店の売り場面積・人口が増えない中で厳しい状況にある。
・雑誌はもともと様々なコンテンツのバンドル販売モデル。しかしネットでは細分化されたコンテンツ消費習慣が一般化しているため、電子化においてはアンバンドルされたコンテンツをどう提供し、収益化できるかが問われる。
・電子出版とは関係なく、既存流通の仕組みに歪みが生じている。そして、それに対応してきた組織や儲けるための方程式を変えるには多大なコストが必要となる。
・電子出版を前提とした新しい出版社は、このある意味電子化における“負の遺産”から自由であり、様々なチャレンジができるはず。
・電子化においても、著者が生み出す権利の最大活用を図る「出版社」の機能がその意義を失うことはない。ただし、その変化の過程において、現在のプレイヤーがそのままそこに移行できるとは限らない。取次に依存しない「メーカー」としての本来の機能を取り戻し強化すべき。
筆者の知るある出版社では、2年以上前から、Yahoo!コミックスに作品をまず無料展開し、Yahoo!の機能を活用しながら独自のプロモーションを行ない、人気となった作品を単行本として既存の流通に乗せる取り組みを実現している。フリーミアムが喧伝される前から、変化に対応を始めている組織・人々がそこにはいる。引き続き、その最前線を追っていきたい。
また、電子化との対極にあるかに思えた「リアル」「ライブ」といった領域も、ここに来て、ヴァーチャルな展開とのシナジーが注目されるようになってきた。星野氏の話にもあった「駅前に一店だけ生き残る書店」とはどのような姿をしているのだろう。次回は「次世代の書店」をイメージしながら考察を進めていきたい。
著者紹介:まつもとあつし
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ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto
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