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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第45回

AMDチップセットの歴史 その4

ServerWorksやNVIDIAに支えられたOpteronの初期

2010年03月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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ServerWorks、NVIDIA、AMDのサーバー向けチップセットロードマップ

ServerWorks、NVIDIA、AMDのサーバー向けチップセットロードマップ

向こう1年は、派生品以外の新チップセットはなし?

 AMDチップセット4回目の今回は、本来なら将来登場予定のチップセットの話をするのだが、今のところ将来のチップセットに関する話題はほとんど出ていないし、少なくとも向こう1年は大きな変更はなさそうだ。まずプラットフォームの観点で言えば、やっとSocket AM3への移行が完了したところで、少なくとも2011年の「Bulldozer」コアに関しては、Socket AM3のまま利用される公算が大である。

 もちろんGPU統合型の「Fusion」コアとなる「Llano」に関しては、従来と異なるチップセット(というかソケット)が必要になるので、これに対応したチップセットがひょっとすると出るかも知れない(関連記事)。しかし、基本的にCPUからチップセットへのバスで必要なのは、HyperTransportと内蔵GPUのビデオ出力のみだから、チップセットそのものは従来のものと同じでもいい可能性はある(無駄は多いが)。

 そういった理由で、1年ほどは現行の「AMD 890FX」(RD890)と「AMD 890GX」(RS890)で、基本的にはカバーできるはずである。また、まもなく「AMD 880G」が登場しそうだが、これはAMD 785Gを若干改良したものとなるもようだ。これ以外のバリエーションとしては、より低価格向けに機能や性能を落とした「AMD 890X」や「AMD 880」、「AMD 890G」、「AMD 890V」といったチップセットが展開される可能性はある。これらはいずれもRD890/RS890をベースに、一部機能を無効化するだけとなるだろう。

 またサウスブリッジでは、SB850をベースにRAID機能を落とした「SB800」や「SB810」などが出てくるかもしれない。だがこれも新規に作るわけではなく、SB850の機能を無効化する形になるだろう。つまり、市場の動向を睨みつつ、いつでも派生型が作れる状況にあるので、もう少しAMDから製品計画が出てこないと、細かい派生型が読みきれないというのが正直なところだ。

 そもそも、AMDは派生型を出荷しながら、プレスリリースはおろか商品ページにすらそれを載せてないなんてことが頻繁にあるので、実際には商品が出ないとわからないというのが正直なところだ。

 一方で、技術的にも当面は、新チップセット投入のニーズに乏しい。PCI Express 3.0に関しては、恐らく2012年前半には各社試作に入るだろうが、対応製品やチップセットが出てくるのは2012年後半(それも第4四半期前後)になりそうだ。SATA 3.0についてはすでに対応済だから、次はUSB 3.0ということになる。だが2ポートだけならばともかく、昨今のトレンドに対応するために14~16ポートをUSB 3.0対応にしようとすると、USBホストコントローラー機能のみならずUSB 3.0ハブの機能も必要になる。これをサウスブリッジに常識的な価格で統合するには、場合によってはプロセスの微細化が必要になるだろう。

 そんなわけで、Llano対応とRD890/RS890の派生型を別にすると、2011年には新チップセットはない、と見ている。


Opteron初期を支えたServerWorksのチップセット

 以上で今回は終わり……というのも何なので、かわりにAMDのサーバー向けチップセットの話をまとめておきたい。こちらは製品数が少ないので、あえて複数メーカー(ServerWorksとNVIDIAの2社だが)の製品を混ぜてご紹介する。

 AMDチップセット編の1回目で触れたとおり、Opteronの立ち上げに際しては自身で「AMD-8000」シリーズを提供したAMDだが、これに続く製品を出さなかった。代わってチップセットを提供したのが、ServerWorksである。もっとも、ServerWorks自身は2001年にBroadcom社に買収されているから、この時点ではBroadcomとするのが正確だが。

 それはともかく、ServerWorksの「HT-1000」が、サードパーティーによる最初のOpteron向けチップセットであるが、フルセットの機能を提供していたわけではないのが痛いところ。ロードマップ図のスペックでもわかるとおり、Opteronとは8bit幅のHTLink(しかも800MHz)で接続されるという、かなり制限の多いものだ(図1)。要するに「AMD-8111 I/O Hub」の代替品でしかなかったわけだ。「133MHz/64bitのPCI-Xバスが出る」といったあたりが、AMD-8111との差別化要因ではあった。

図1 HT-1000使用時のシステム構成

図1 HT-1000使用時のシステム構成

図2 HT-1000による2プロセッサー構成

図2 HT-1000による2プロセッサー構成

 ちなみに、システム的には図2のような2プロセッサー構成も可能という話だったが、明らかにHT-1000がボトルネックとなるため、この構成の採用例は見かけたことがない。実はServerWorksの場合、図3のように「HT-2000」とHT-1000を組み合わせての構成が本来の姿だった。ところが、このHT-2000の提供が遅れたため、やむなくHT-1000のみで先行提供を開始したわけだ。

図3 HT-2000とHT-1000を組み合わせたシステム構成

図3 HT-2000とHT-1000を組み合わせたシステム構成

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