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佐藤大輔氏・ロングインタビュー

PRIDEと似ている──「煽りV」の映像作家が語るニコ動

2010年04月07日 12時00分更新

文● 広田稔/ASCII.jp編集部

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お客さんが舞台のアーティストを安心させる

── 「熱を失わないまま」というのは、どういうことですか?

佐藤 例えば、本当のテレビ屋だったら、このニコニコ大会議を「ド」バラエティーに仕上げますね。

 僕はもともとテレビ業界出身なんですけど、その視点で視聴率20%を取ることを考えると、ひろゆきさんと夏野さんという司会はあり得ない。テレビに出てみんなが知ってる有名人を並べればいい。それでいいんです。

 でも、僕は嫌なんです。それだと会場の熱がスカスカになってしまう。「この熱をどういう風に伝えていったら分かるものになるんだろう」と考えたいんです。そうじゃないと、つまらなくなってしまうじゃないですか。芯の熱がなくなってしまったら、結局そのソフトもなくなってしまうんです。PRIDEというソフトも、本来の格闘技ファンの熱を失わないまま視聴率20%を取れたことに意味があったわけで。

一連の大会議ツアーでは、ドワンゴ取締役の夏野剛氏とニワンゴ取締役の西村博之(ひろゆき)氏が司会を務めた

 とはいえマニアックだ、一般に知られていないからといって、今回出演したニコ動出身のアーティストの方々を下に見ている気持ちはまったくありません。素直に「スゲー」と感じています。


── あれだけの大舞台に立って、お客さんを楽しませられるというのはなかなかできないことですよね。

佐藤 もしかしたら、それはステージに立った彼ら、彼女らだけじゃできないことかもしれない。多分、ニコニコ大会議はお客さんが主役なんです。お客さんが彼らを安心させて、あれだけのパフォーマンスを引き出す。それはニコニコ動画の歴史ですよね。

「ニコニコ大会議はお客さんが主役なんです」


── テレビ業界の話が出ましたが、最近「テレビがつまらない」という声がネットでよく聞かれます。それについてどう思われますか?

佐藤 僕はテレビ業界にもいて、その他の仕事もしている人間なので、両方の視点を持っていると思うんですが、僕はテレビをつまらなくしているのは、もしかしたら視聴者じゃないかと思うんですよ。

 あんなに苦情だ何だって殺到したら、萎縮して面白いものが作れませんよ。だから視聴者やネットユーザーが自分で自分たちの首を絞めている面もあると思う。「コレやっちゃいけない」「アレやっちゃいけない」と、企画を考える人は最初からあきらめますからね。「オッパイポロリ」がなくなるワケです。

 その中で戦っている番組ももちろんありますよ。バラエティでいえば「めちゃイケ」とかは好きですね。でも時代の趨勢で仕方のないことなのかもしれませんが、テレビもだんだんスカスカなものになっていくでしょうね。


── 一方、ニコ動では多くのユーザーを熱狂させるような映像コンテンツが生まれていますが……。

佐藤 でも「受け皿」というか、ニコ動で食っていけるかどうかというところは見えないですよね。ネットコンテンツは基本、タダで流通するものなので、どこでお金をもらうかというと広告やスポンサードしかあり得ない。コンテンツを気に入ってくれる人がいて、それを商売に転化できるかということです。そういう意味で言うと、まだ成熟していない気がする。

 僕は自分のことを映像クリエーターとは思っていないんですよ。CGを作れるわけじゃないし、映画を撮ったことがあるわけじゃない。映像のアイデアとか新しさでいえば、ニコ動のトップで活躍している人にかなうわけがないと思っている。影絵のやつとか素晴らしいですよね。あと、大会議ツアーの広島で見た「厳島神社の人」はスゴいなと思った(関連記事)。次の「DREAM」から一緒に仕事をしたいくらい(笑)。もう「プロとアマの差」なんてないんですよ。

「厳島神社の人」(zoziさん)は実写と3Dオブジェクトを合成した動画を数多くニコ動に投稿している方。ニコニコ大会議ツアー in 広島では、ニコニコ生放送で有名なユーザー「百花繚乱」さん(関連記事)と厳島神社の3Dオブジェクトを合成した動画を披露した。

[実写合成]厳島神社に行ってみた~レポーター百花繚乱[3D]



 僕は自分のことを「煽り屋」だと思っていますから。ただ、ゲッペルス級の世界一の宣伝大臣でありたいとは思ってます(笑)。ただの宣伝相だとね。だからむしろ彼らの力を借りたい。

── 最後に、次にニコ動用の「煽りV」を作る機会があったらどうしますか?

佐藤 川上さんがやれっていったことは全部受けますよ(笑)。僕らの恩人なので。「情」と「侠」と「物語」を大切にしている、僕らと似た発想を持ってらっしゃる方で、ここまで成功している媒体をお持ちなので、勇気がわきますよね。ぜひご一緒させてほしいです。


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