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動画サイトってどうなの? 儲かるの? 第5回

「イヴの時間」プロデューサーが語る、新時代のアニメ産業論

2010年04月03日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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テレビではありえない「2ヵ月に1話」の配信ペースが功を奏した

―― 子供向けのアニメ番組などはテレビ局から制作費をもらって作ることもあります。この場合はGyaO!さんがそこにあたるわけですが、調達費などの提供を受けるということはなかったのでしょうか?

長江 それはありません。もちろん配信後は配信権利料をいただきましたが、資金的なサポートは受けていません。実はGyaO!さんの担当者の方に、トレーラーの時点で作品をとても気に入っていただけたんですね。当時は海のものとも山のものとも知れなかったものを、「個人」として熱心に応援いただいたことがきっかけになったんです

担当者による応援 : GyaO!などの大手動画サイトでは作品の特集ページを編成する際、そのコンテンツがページを維持するだけの十分な広告収益、つまり集客力・トラフィックを見込めるかが厳しく問われる。インディーズ系の作品はこのハードルをクリアするのが難しい

劇場版ポスター

―― なるほど。しかし最近、「ネット発の映像・音楽コンテンツはニコニコ動画」という風潮があります。GyaO!での配信だけで、コアとなるファンを獲得し、クチコミで話題がひろがっていったという手応えはありましたか?

長江 「2ヵ月おきに1話公開」という、テレビにくらべると非常にゆったりとしたスケジュールだったので、話題性をうまくつないでいくことが出来るのか不安はありました。

 しかも前半が終わったところで、その制作スケジュールさえ崩壊するのですが(笑)、視聴者からのフィードバックをエピソードごとに受け止めながら、次のエピソードに活かすことも出来ました。予想以上に好意的なフィードバックが多く、我々のモチベーションも上がりましたね

 イヴの時間は、いわゆるアニメのコアファンだけでなく、もう少し広い層にも響くポテンシャルのある作品だと思っているので、結果的にユーザー層が幅広いGyaO!さんをファーストウィンドウに出来たことは幸運だったと感じています。

 ただ、いざ劇場公開となったときには配給を担当するアスミックエースさんと「ターゲットがとらえづらい」と頭を悩ませることになったんですが(笑)。

■ 「イヴの時間」第1話



▲ 当初はユーザーによってニコニコ動画でも無許諾アップロードされていたが、そちらにも好意的なコメントが多く、削除は忍びなかったと胸中を明かした。現在は公式配信されている

―― 視聴者からのフィードバックを番組コンテンツに反映させるというのは、NHKでの番組制作の経験が活かされているわけですね。ある意味、CGMでの展開をテレビで先行して実践されていた……。

長江 それはあるかも知れませんね。デジスタをはじめ、私が制作に関わった作品は「作って流して終わり」ではなく、むしろ「流してから始まる」、つまり視聴者からの応募作品や投稿メールといったレスポンスを制作に反映させながら展開するものが多いんです。

フィードバック : テレビ放送では毎週の納期に追われることが多く、劇場公開ではもちろんユーザーのフィードバックを受けながらストーリーや演出を変えることは難しい

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