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iPhone/iPod touch Game Devシリーズセミナー 第8回レポート

日本のゲーム業界は「Sea Change」できるか?

2010年03月23日 16時00分更新

文● 倉西誠一

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科学的な分析について

 大前さんのこの御発言、日本のコンシューマゲーム業界にとっては、これから本当に切実な問題になるような気がしました。


大前「パワーを注ぎたいポイントが変わってきたのではないか。例えば、大型のゲームというビジネスモデルから脱却したいなど。大きな予算、売上をコントロールする話が、去年は多かったが、今は小さく産んで大きく育てるための方法論が模索されている」

 誰もが知っているような大作だけの問題ではありません。そうした大作の制作体制に顕著なことかもしれませんが、最終的なアウトプット=ゲームを売るという仕組みには違いがない以上、大きくはないプロジェクトでも、結局は同じでしょう。

 極論を言えば、ディスクに焼いて売るということ自体がコストなら、組織を作って開発をするということ自体も、もうコストでしかないのかもしれません。


大前「ゲームデザインを科学的に分析して改善する方法論が確定したという印象もある。統計がとれるユーザーコミュニティという武器を得たから。お客さんに喜んでもらえるものはなにかということを、統計ベースでちゃんと計測している」

 北米を中心にソーシャルゲームが主流になっていったことの意味は、ここにあったようです。これまでディスクベースのゲーム作りが、医者で言えば触診レベルだったのに対して、ソーシャルゲームの「科学的な分析」は、まるで遺伝子療法のようです。それくらい大きな違いがあるような気がします。

「科学的に分析するということが、今年のキーワードだったと思う。どんどん分析して、それをお金にしていくんだということ。それがわかっているかどうかで、大きな差が出ている。そうした点で、日本のメーカーは周回遅れになっているという認識がある」

 そしてそれは、圧倒的に正しく聞こえます。新さんの御発言には、こういうものもありました。


「ソーシャル化という収益構造が見えた途端に、投資が動いている。ゲーム単体には投資しないが、技術や仕組みにはお金が流れ込んでいる。1、2年前に仕込んでいたものが芽吹いているという印象を受けた」

 そして、その正しさは投資というかたちで可視化もされつつあるようです。この傾向がより強まれば、誰もそれに反論できなくなるでしょう。圧倒的な正しさと、その正しさを量的に証明しようとする投資。この2つの流れが同じ方向に向くと、もう誰にも、それこそユーザーにも止められない、強烈な流れとなるでしょう。

 でも、ですね、と。

 これは論理的な反論ではなく、あくまで元電撃PlayStation編集長レベルの直感でしかないのですが、たとえば西洋医学と東洋医学の考え方が根本的に違うように、同じ目的で違う手法というのは、それこそワールドワイドでは共存できるものではないかと考えます。遺伝子療法では治らない病も、足の裏のツボを押せば治ったりするかもしれない。

 要は、同じ競争をしなければよいだけの話で、そろそろ、ゲームの世界は異なる考え方の存在を許す豊かさを持ち得るのではないか? そこにこそ、ソーシャル化の意義を見出すべきだし、見出すことができれば、なにも日本の現状を悲観する必要もないのではないかと、そう、夢想してしまいます。

 あ、でも、この機会に大胆な構造改革を進めるのはありですけどね。

「GDC会場の自動チェックインで驚いたのは、Twitterアカウントが入力できるようになっていたこと。アカウントは、パスに印刷される。ポスターにもハッシュタグが告知されていたり、主催者側もつぶやきを促進していた」

 最後に。Twitterは、まだまだ使いますね。社内でも議論があったりするわけですよ、「Twitterはいつまで流行ってるんだ?」みたいな(笑)。そんなこと知りませんけど、今、流行ってるのは事実ですし、僕的にはまだのびしろがあるとも感じています。そもそも、使い切れていない。もうちょっと本格的にTwitter利用を考えてみようかと思いました、はい。


筆者紹介──倉西誠一


石川県金沢市出身の元・電撃PlayStation編集長。著書は「モンスターハンター」シリーズのプレイログである「狩られ道」「狩られ道豪黒毛」(いずれもアスキー・メディアワークス)だが、最近はすっかりiPhoneゲーマー。Twitterアカウントはkararemichi



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