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iPhone/iPod touch Game Devシリーズセミナー 第8回レポート

日本のゲーム業界は「Sea Change」できるか?

2010年03月23日 16時00分更新

文● 倉西誠一

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 今回のセミナーについては、僕なんかがまとめられるものではないのですが、散文的に感想は書いておこうかと思いました。あくまで散漫な文章で感想レベルですが、実感はある? つもりだったりします。


iPhoneアプリのビジネスについて

「ngmocoのセッションもあった。去年は鼻息も荒かったが、今年はそれほどでもなかった。iPhoneのマーケットが、思ったよりも厳しかったのでは? という印象を受けた」

 昨年のことを知らないのですが、なんとなく想像はつきますよね。おそらく昨年はiPhoneアプリ市場がどんどん成長していったタイミングだったので、「こんなゲームがウケる!」という話題になっていたのではないかと思います。

 それが、1年経って状況が変わって、より練り込まれた(ソーシャルを意識したと言い換えればいいのかな?)アプリ展開、サービス、手法がに必要になったという話なんでしょうね。


「iPhoneアプリも、ソーシャルゲームとして提供しないと収益が上がらないのでは? という話になっていた。まず、ゲーム内アイテムの販売が、非常に伸びている」

「収益を上げるためにはアプリを売るだけでなく、アプリ内課金を使ったり広告をやったりと、いろいろな方法を組み合わせなければならないという話だった」

「BackFlip Studiosのセッション。PaperTossのAppStoreでの(アプリの)売上は8.9万ドル、ゲーム内広告の売上は37.9万ドル。この結果からも、無料アプリのリリースでインプレッションを高く保ち、ユーザーとのパイプを太くすると言っていた」

 その具体例が上のような御発言に出ているのでしょうが、僕が興味を持ったのは、以下の御発言でした。


「また、彼らは0.99ドルで出される(ような)アプリを買収するという方針を掲げていた。開発している会社ではなく、アプリを買収するというのは珍しい考え方だ」

 この御発言の「先」を想像すると、もはやユーザーではなく、アプリそのものがソーシャルな結びつきを獲得していくような未来が想像されます。僕自身、まだうまくイメージを説明できないのですが、小さなアプリの集合体が大きなアプリを形成するようなイメージです。

 AppBank Podcastでちょっとだけお話ししましたが(入ってたかなぁ……収録時にはお話ししました)、タイトルやブランドという無形のものを根拠として、極めて緩やかな結びつきでアプリ同士が集合するようなイメージなんですが……難しいですね……。そうなると、タイトルやブランドというものの考え方も変わるはずです。

 いずれにしても、今現在の時点で理解できる重要なポイントは「囲い込まないこと」です。囲い込もうとするベクトルは、先細りという経過と結果しか生まないと、僕は考えます。より広がっていくこと。線で結びつきながら、遠くへ遠くへと運動する遠心力を意識すること。ん~、難しい(笑)。


「アップデートした時のApp Storeでの説明が、更新情報だけの簡素なものではダメだ。効果的なアプリ名、スクリーンショット、説明文、メディアでどう書かれたのかの引用文や、継続的なアップデート情報をまとめるべきだ」

 それと比較するとぐぐっと具体的な内容ですが、これも極めて重要であると感じます。いつかその関係性すら崩れる時がくるのかもしれませんが、まず数年は作り手←→ユーザーという関係は続くと思います。

 であれば、これまで以上に厚いコミュニケーションが必要になります。また、であればこそ! 僕らのようないわゆるゲーム雑誌というオールドメディアのノウハウも活かすことができます。これはありがたい(笑)。よし! 次の世代にも仕事はあるな! という感じです。

 それは半分冗談だとしても、ユーザーとのコミュニケーションには、ますます注力していかなければいけないということは、疑いようもありません。アプリのリリースやアップデート自体が、すでにコミュニケーションなのでしょうし。


「アプリは、なにかきっかけがあってダウンロード数が伸びていく。まずブログに書かれて、アップルにフィーチャーされて、ギズモードに書かれて、アップデートがあったり……ということなどが、そのきっかけになるようだ」

大前「重要なのは、デザインとPRだ。目を引くデザインでPRがメディアを引っぱり、メディアに載ればアップルが反応し、アップルがPRしてくれればアプリが売れてお金になる。たくさん儲かってよかったよかったという話」

 グラフ類をお見せできていないのが申し訳ないのですが、このきっかけを捉えるということもまた、非常に重要なポイントのようでした。実際、上の御発言にある1つ1つのタイミングで、DL数はぐんっぐんっと上がってたんですね。

 微力ながら、ブログやってたり、電撃ゲームスの記事を書いたり、ASCII.jpに書いていたりするのも意味がある? のかな? あるといいなぁ(笑)くらいには思えました。

 それはともかく、これは大きなメーカーさんも個人開発者さんも等しく仕掛けられることですし、こういうこともやらなければならないんでしょう。

 ゲームのアイディアがあり、それを実現して、これまで「ゲームを作る」といえばそこで終わっていたものが、その先のコミュニケーションまで考えなければならない。でも、ここにも自分たち、メディアの仕事があるなと感じます……。

 メディアとしては非常に原始的な意味合いですが、そこに立ち返ることができて、なおかつそこから現在の状況に吐いたらない道を想像できるということも、僕自身がiPhoneアプリに感じている面白さなのかもしれません。

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