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角川会長が語る「クラウド時代と<クール革命>」(後編)

2010年03月12日 12時30分更新

文● 津田大介/ジャーナリスト 撮影●三井 公一(サスラウ)

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日本のコンテンツは「ガラパゴス」でいい

── グローバリゼーションが進む中、今まで日本が世界に対して輸出していた自動車や電機といった基幹産業の状況が変わっています。これから日本の基幹産業はクリエイティブ業界に移っていくと思われますか?

角川 そう。はっきり言うと、メディア企業という言葉はなくなって、インターネットサービス事業者になっていくんだと思う。それから、ものを作っている会社自身が、サービスがなければ売れなくなってきてる。セブン-イレブンの鈴木さん(CEOの鈴木敏文氏)も先週、「これからコンビニはサービスで売る」とおっしゃっていた。

 僕は知的企業だけが生き残れると思っていて、最初はこの本の前書きにも書いていました。でも、知的企業とは何かをもっと深めたいと思ったので、その定義をあえて削ったんです。結局「事業構想力を持った知的企業だけが生き残る」とだけ書いて、「知的企業」のカッコを削った。

 知的企業とは何か。サービス化についてももっともっと考えないといけない。この本にしても、この内容をどうサービスにつなげていくか。そういうことを僕らはこれから真剣に考えなきゃいけないんだよ。


── 間違いなく、編集者の役割も変わって行きますよね。今まで作って編み上げることだけが仕事だったのが、今後は売り方や、付加価値の提案といったその先の“伝送”の部分までトータルに考えて編み上げられる人が求められる。

角川 その通りだね。


── 最後に、本の最初に書かれていた「日本は文化のナンバーワンでなくオンリーワンを目指すべき」という提言の趣旨を、もう少し具体的に教えていただけますか。

角川 日本のコンテンツは世界シェアの10%という話があるよね。マーケットリサーチでもそういう結果が出ているうえ、Googleでもアップルでも現場の人たちは日本のコンテンツは10%のマーケットがあるんじゃないかと偶然、言っている。僕はこれがグローバルスタンダードだと思っているんだ。

 これがメイクマネーできてないことが、僕にとっても大きな問題意識。10%をメイクマネーする事業構想力が欲しいんだよね。自分自身に。

 日本のコンテンツが、これから世界の中心になるかといえば、僕はならないだろうと思う。ならなくてもいいんじゃないかと。つまり、なったらよさを失うんじゃないか。


── アメリカに合わせていく必要はないし、日本で出版されるもの全部がハリウッドみたいになる必要もない。

角川 そう。だから、コンテンツは「ガラパゴス」でいいんだよね。日本のコンテンツは偉大なるグローバル・ニッチなわけだよ。グローバル・ニッチであることによって、日本のコンテンツは尊敬されるようになるわけだから。ニッチじゃなくなったらいけないと思うんだよね。


── 世界規模で見たときの、ロングテールを拡大していけばいいと。

角川 そうだね。頑張りましょう。

非常に面白いインタビューをありがとうございました!


筆者紹介──津田大介


インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するメディアジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著は「Twitter社会論」(洋泉社、Amazon.co.jpで見る)。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。




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