特別付録■ 山本ニュー氏が選ぶ必聴のアルバム10枚
というわけで最後に、レコードコレクターでもある山本ニュー氏に必聴盤となるアルバム10枚を厳選してもらった。その異常なほどの音楽知識の片鱗を、アルバムタイトルの中に感じとってほしい。
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One-Trick Pony |
■ Paul Simon/One Trick Pony(1980)
自らが主演を務めた同名映画のサントラ。映画の出来自体はサイモンファンをもってしても「ちょっとこれは……」だったらしく興行成績も散々だったが、スティーヴ・ガッドら一流のフュージョン系ミュージシャンを従えたサウンドはトータルで隙がなく、何しろクールの極み。小沢健二が元ネタにした「レイト・イン・ジ・イヴニング」収録ってことでも有名かも。
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オン・ファイア(紙ジャケット仕様) |
モラトリアム。まさにモラトリアム。たるいギター、隙間だらけのリズム隊、悲鳴のようなコーラス。これをあの変人のクレイマーが手がけたのか? と最初は耳を疑ったが、聞けば聞くほど効いてくるのよ、これが。人をダメにする音楽。
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Boomania |
90年代初頭、UKポップシーンのイコンとなったベティ・ブーのデビューアルバム。元々はShe Rockersというばきばきにストリートなユニットで活躍していた彼女だが、ここでは1曲ごとに役柄を変えるアイドルを演じきっている。曲がいい。ラップがうまい。そして可愛い。他になにが必要だと?
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Lincoln |
■ They Might Be Giants/Lincoln(1988)
世界で一番ポップなメロディを書くのは誰か? それはTMBG。「Ana NG」「They'll Need A Crane」をはじめ、たったふたりで作った万華鏡ポップがぎっしり。しかも短い。そんでもって、歌詞がヒネてるんだ、この人らは。今や全米のちびっこのアイドル。
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Forever Changes |
とにかく凶悪でサイケデリックな音を聞きたかった高校生の頃、どろどろのジャケットに惹かれて買ってしまった一枚。ところが聞こえてきたのは、アコースティックな響き。なんじゃこりゃ、と思いつつももったいないから何度も聞いてたら愛聴盤になったとさ。これもひとつのサイケデリック、とぼくは学んだ。
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Whatever and Ever Amen |
■ Ben Folds Five/Whatever And Ever Amen(1997)
バカラックがいなくても、ぼくらにはベン・フォールズがいるから安心だ、と思わせてくれた一枚。そして、若ハゲの人はビターないい歌詞を書く、という自説を強力に裏付ける一枚。「Fair」の美しさ、残酷さ。こんな曲だけずっと聴いていられたらいいのに。
■ ポール・モーリア・グランド・オーケストラ/ラブ・サウンズ・ジャーニー(1976)
日本をテーマに全曲オリジナル(!)で挑んだコンセプト作。モーリアを語れば1000文字は余裕なので省略するが、保守的なイージーリスニング界にロックやサンバ、サイケ、ディスコ、フュージョン、果てはシンセポップまで持ち込んだモーリアが革命児であったことだけは明言する。このアルバムでも冒頭の「パリ=東京直行便」から怒涛のグルーヴが君を襲う。「ポール・モーリアってこんなだっけ?」はい、こんなだったんです。
■ Missing Foundation/Ignore The White Culture(1990)
ノイズなんか大っキライだ。あんなもの好きこのんで聴いてるやつは「オレ、ノイズも聴くんだぜ」って言いたいだけちゃうんかと。うん、ノイズなんて音楽じゃない。でもMFはかっこいい。矛盾してるって? だってかっこいいんだもの。ならきっとこれはノイズじゃないんだ。
ボサノバ~フォークだけではなく、ファンクネスをも貪欲に取り組んだ意欲作。細野晴臣をはじめとする凄腕ミュージシャンを従え、Chaseを思わせる高速ブラスロック「巡礼者」や、ドープなグルーヴを聴かせる「もう飽きてしまった2」だけで十分死ねるが、緩急つけたセレクションはアルバムトータルでも素晴らしい。
アルファレコードを立ち上げた作曲家・村井邦彦の総指揮のもと、海外録音・全曲英語詞で和製フィフス・ディメンションの面目躍如の3rd。タイトル通りのあまりにも美しいハーモニーポップが並ぶが、バカラック狂も悶絶のボッサポップ「Love Him」で昇天確実。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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