第28回の調査でもあきらかになっているとおり、闇雲なコスト削減は従業員のモチベーション低下につながる。だが、NTTコミュニケーションズの「.Phoneユビキタス」を導入すると、コストを下げつつ、モチベーションを向上させることができるという。NTTコミュニケーションズ ビジネスネットワークサービス事業部の吉崎明彦氏にそのコスト削減効果について聞いてみた。
モバイルIP電話の本命「.Phoneユビキタス」とは?
NTTコミュニケーションズの「.Phoneユビキタス」とは、050のIP電話をPHSサービスから利用できるサービスだ。「OCN .Phone Office」やIPセントレックスサービス「.Phone IP Centrex」などの050 IP電話サービスのユーザーとの通話がなんと無料になる。また、加入電話や携帯電話への通話もリーズナブルな料金で利用でき、企業の通信コストを劇的に下げることが可能だ。2007年からサービスをスタートし、すでに3年目。IP電話サービスの伸び悩みが伝えられるなか、今も純増を続けている成長株だという。
この好調の一因が、不況に端を発していることはあきらかだ。NTTコミュニケーションズ ビジネスネットワークサービス事業部の吉崎明彦氏は「どの会社さんもコスト削減ありきで、このサービスを導入します。ターゲットとしている中小企業の社長さんは、営業マンが携帯電話から取引先にかけたり、会社と連絡するコストもけっこう気になさっています」と語る。これに対して、NTTコミュニケーションズも、他社のケータイサービスと比べても安価な月額1890円/1回線の「新.Phoneユビキタスコース(2年割)」の提供を開始。値頃感をますます高めている。
弱点も無視できる?大きなコスト削減効果
では、実際にどの程度コスト削減が可能なのだろうか? 同社の試算では、1日平均5回、携帯電話の通話を行なう場合の月額利用料を考えると、比較対象のキャリアによっては2405円/月の差額が出てくるという。つまり、30台の端末を考えると、年間で実に86万5800円のコスト削減につながる。.Phoneユビキタスの端末を持った社員同士の通話が無料になるほか、取引先等への電話代が安くなる。
もちろん、050のIP電話サービスであるOCN.Phoneを社内の電話で導入すれば、.Phoneユビキタスの端末との通話が無料になる。これにより、いわゆる社員間の通話が無料になる「モバイル内線」が実現できるので、外出先から社内に連絡する通話料も節約可能になる。また、OCN.Phoneのユーザーもすでに約400万番号に渡っているため、取引先がOCN.Phoneを使っていれば、通話料が廉価に抑えられる。
さらに、.Phoneユビキタスでは通話料だけではなく、データ通信コストも安価に抑えられる。そもそもメール利用料は無料で、ケータイのWeb利用だけではなく、PCにモデムとしてつないだ場合も上限2800円で使い放題。当然ながら、ケータイの定額プランよりも安価に収まるので、コストインパクトは大きい。
もちろん、.Phoneユビキタスにも弱点がある。ウィルコムのPHSを使うため、携帯電話に比べてエリア面で弱いこと。そして端末の機能がやや不足している点も挙げられる。しかし、数多くのユーザーの話を聞いてきた吉崎氏は「本当にコストを削減したいので、エリアや端末の問題は、気にならないという社長さんもいました。実際、PHSで圏外だったら、個人の携帯電話や会社の番号に転送して運用しているところも多いです」とデメリットよりコスト削減圧力のほうが大きい現状を語る。その分、コスト削減効果が小さいと仕分けられた場合、あっさり解約してしまうユーザーもいるという。端末もスマートフォンはむしろサブの選択肢で、シンプルな音声通話端末のほうが人気が高い。派手な携帯電話端末と異なる質実剛健さが、むしろ企業には受けているといった具合だ。
目指すはストレスフリーな
コスト削減
サービス自体も始めてからすでに3年経っていることもあり、こうしたコスト削減の効果もかなり現実味がある。「いろいろなお客さんがいるので、一概に言えませんが、通信費が2~3割くらい落ちましたというのが多いですね」(吉崎氏)ということで、通話料を「大幅に削減します」「劇的に下げることができる」という表現は決して誇張ではない。
とはいえ重要になるのは、単なるコスト削減では、従業員の支持は得られないということだ。ご存じのとおり、闇雲なコスト削減が従業員のモチベーションが下がるのは明らか。今後はコストカットと従業員のモチベーション向上を両立する「モチベーティブコスト削減」が求められる。この点でも.Phoneユビキタスは優れているという。
「たとえば会社が通話料を肩代わりするのを止めてしまっては、営業マンも自腹切ってまで電話をかけないでしょう。やはりモチベーションは下がりますし、社員間のコミュニケーションは減ってしまいます。こうした会社に.Phoneユビキタスをお勧めします」(吉崎氏)とのこと。コストを気にせず内線感覚で音声通話が可能な.Phoneユビキタスが、営業マンのモチベーションを上げたという声はいくつもある。実際、デスクから固定電話を撤廃してしまった印刷会社のミカドや、ボイスメールとの連携を図った不動産会社の渡辺住研など興味深いユーザー事例も公開されている。吉崎氏は「ユーザーさんも使い始めると050にかければ無料という意識を持つようになるので、コスト削減につながりやすいようです」と語る。
今後はまず端末の種類を増やしていくほか、転送機能の強化やマイクロソフトのOCS(Office Communications Server)との連携も図っていく。また、BizCITYブランドの元、クラウドサービスとの連携も視野に入れていくとのことで、コスト削減のツールだけではなく、より機能面でも充実したサービスに進化していきそうだ。
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