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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第7回

同時アクセス、プリントOK

意外と「緩い」仕組みで始まった日経電子版の狙いとは

2010年03月01日 09時00分更新

文● 大河原克行

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有料読者は5%ほど?

 日本経済新聞社電子新聞事業担当の岡田直敏氏は、「3月23日の創刊が完成版とは思っていない。今後、様々な意見を聞いた上で、改良を加えていく」とする。

 まずは使ってもらうことが優先というのが、現在の電子版に対するスタンスだ。

 先に触れたひとつのIDでの同時アクセスを可能しているのも、その姿勢の表れであるし、プリントアウトも自由にできて、これを社内で回覧することもできるようにしている。「社内にはまだコピー&ペーストについては最終的な結論が出ているわけではない」とし、今後、あらゆる角度から使用状況を把握および分析することで、それによってサービス内容を進化させていく考えだ。

 有料契約は、310万部の約1割にあたる30万契約が当面の目標。そして、ID登録に関しては、50万人を目標とし、早期に100万登録へと拡大を図りたいとする。

発表日夕刻にはブロガーなどが参加したパネルディスカッションが行われた

 30万契約の到達は、紙がなくても電子版で十分とする既存読者がどれぐらいいるかがポイントとなるだろう。一方で、50万のID登録は意外とハードルが低い目標であり、早期に達成できる数字かもしれないと感じる。

 有料ユーザーは全体の5%程度だろうと日本経済新聞社では読んでいる。ここに到達するまでは、そのほとんど現在の日経新聞読者による併読になるだろうと読んでいる。そして「次のステップでは、日経新聞には興味があるが、紙を取るのは嫌だという読者層を取り込んでいきたい」とする。

 「最初の一歩はここから」というのが今回の電子版のサービス内容だ。どんな方向にサービス内容が進化していくのかどうかの方がさらに興味深いといえる。

会見後もデモストレーションに多くの記者が殺到した

 いずれにしろ、新聞各社が、日本経済新聞の電子版の成り行きに注目しているのは明らか。同社では、それを見越してか、購読管理や課金システムなど、今回の仕組みを他社にも提供していく姿勢を示していている。

 その点では、いち早く乗り出した日本経済新聞社の仕組みが、新聞の電子化のスタンダードになる可能性があるといえる。

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