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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第7回

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意外と「緩い」仕組みで始まった日経電子版の狙いとは

2010年03月01日 09時00分更新

文● 大河原克行

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高価に感じるが、果たしてどうか?

 月額4000円という価格設定は、インターネットの記事を無償で閲覧することに慣れた人たちには、極めて高価に感じるだろう。年間で4万8000円という価格は、マイクロソフトのOffice2007 Personalの市場想定価格とほぼ同じ。

 ネットの購読料金とオフィスアプリケーションとは、まったく異なるものので直接比較はできないが、個人にしても、企業にしても、毎年、オフィスアプリケーションを追加導入するのと同じだけの投資が必要になるという計算だ。

 だが、見方を変えると4000円という価格はリーズナブルにも見える。

 新聞の朝夕刊の購読料が月4383円。全日版の地域では3568円。電子版では、東京最終版の新聞に掲載されるすべての記事が提供され、PCで読みやすいように横組みでレイアウトした情報提供とともに、新聞の紙面イメージをそのまま表示する紙面ビューアーを用意。記事のレイアウトによる価値付けの違いを意識できるようにしたり、拡大することで、新聞レイアウトのまま閲覧することも可能だ。

テレビ東京と連携して映像も配信する

 つまり、新聞の情報はすべて入手でき、それでいて新聞には掲載されない情報までが入手ができる。新聞プラス新聞の数倍もの情報が入手できるという点では、新聞購読料よりも安い、4000円の設定は魅力的に見えるというわけだ。既存の日経新聞読者で、PCやケータイを頻繁に利用している人にとってみれば、電子版への移行は選択肢のひとつとなる。

 だが、この価格設定は、「紙の部数に影響を与えない価格。電子版を開始しても、部数は減らないと考えている」ということを前提に設定されたものだ。言葉尻りを掴むようだが、紙の部数を意識しなければ、より戦略的価格設定も可能なようにも聞こえる。長い視点で見れば、経営の軸をどこに置くかという判断によって、価格体系の変更も、当然あるのだろう。

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