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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第42回

新VAIO Z開発者インタビュー

「あきらめない価値」を追求したモバイル 新VAIO Z

2010年03月01日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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アキバじゃ買えない「オリジナル・クアッドSSD」

新VAIO Zに内蔵されているSSDモジュール

新VAIO Zに内蔵されているSSDモジュール。写真はクアッドSSD用で、表裏それぞれに1組のSSDが実装されている

 さらに、パフォーマンスという点で大きなトピックといえるのが「SSD」に対する取り組みだ。CTOモデルでは、SATAのSSDを4チャンネル分組み合わせて、RAID 0(ストライピング)構成にできる。ソニーではこれを「クアッドSSD」と呼んでいる。プラットフォームとしてはSATA 4チャンネル構成に対応していても、軽量をむねとするモバイルノートで、ここまで大胆かつ贅沢な構成の製品はない。なにしろ容量は最大512GBになり、しかも前モデルで高速ぶりが話題となった「SSD RAID」よりもパフォーマンスが上がるのだ。

 さらに言えば、新VAIO Zは「SSDの採用」が前提の製品で、HDDはオプションでしかない(HDD内蔵はCTOの「光学ドライブなし」構成時に限定)。

金森氏

「VAIO Zの価値を認めていただける方ならば、SSDの価値を重視するだろうと」(金森氏)

金森「SSD中心の製品にすることは、モビリティーを重視するという意味から、比較的早期に決まっていました。VAIO Zの価値を認めていただける方ならば、SSDの価値を重視するだろうという判断です」

「前モデルの購入者レビューを見ると、SSD搭載モデルは高価なものにも関わらず、想像以上に選択していただけました。VAIO Zでは、『ビジネスのために会社がお金を出してくれる』あるいは『自分の仕事のために投資する』というユーザーの方が多いのですが、そういう方々にとっては、SSDが十分コストパフォーマンスとして成り立っている、ということだと思います」

 その中でやはり、新製品の「オリジナル要素」として用意されたのがクアッドSSDだ。狭く小さな空間に収納するために、ここでも独自の工夫がある。

鈴木「新Zの場合、2チャンネル構成のSSDでは、それぞれの基板の片面だけにSSDが実装されています。クアッド構成用では、1枚の基板の両面にSSDを搭載し、基板2枚で4チャンネルを実現しています」

「この容量を実現するには、両面実装しないといけなかったり、サイズ的に既製品の基板では入らないという問題もあったので、今回は完全オリジナルのモジュールを、SSDモジュールメーカーに作っていただきました」

「実のところ、オリジナルのものを作るのはとてもリスキーです。しかし、単に『SSD搭載モデルを中心に』というだけでは物足りないと考え、オリジナルを採用することにしました。SSDでRAIDというと、市販のSSDを買って人柱的に試している自作ユーザーさんもいらっしゃいますが、これはオリジナル基板ですから、やろうと思ってもできません(笑) 密かに自慢に思っている点です」

「クアッド構成の採用は、パフォーマンスにもプラスですので前々から考えていました。これを実現するにあたり、『既製品の小サイズのモジュールを4つ搭載しては』とも考えましたが、どうも軽くならないし、コネクターの分だけサイズが大きくなってしまいます。それならばということで、オリジナルモジュールを作ることにしました。このモジュールも、そのまま製造しては予定の場所に入らないので、基板の周囲を製造時に削っています。あまりやりすぎても製造が大変になるので、標準的な製造装置で作れる、ギリギリのところまで小さくしました」

 ただし、「スピード」や「快適さ」の追求は、すべての場面で有効なわけではない。そこで新VAIO Zは、明確にある場面や使い方を考えたチューニングを施した製品に仕上げられている。

鈴木「ここで明確にしておきたいのですが、クアッドSSDのように多数のデバイスを搭載した製品としたため、シンプルな構成の機器に比べると、スリープからの復帰や電源投入からOSの読み込みまでが遅い場合もあります。ストレージからの読み込み速度は速いですから、休止状態からの復帰は速いのですが……。これは狙いの違いとご理解ください。ゼロヨンレース的な速度ではなく、最高速や巡航速度の速さにこだわった設計なのです」

 これはすなわち、携帯電話やPDAのように「実行速度よりも、パッと開いてさっと使う体感速度重視」が求められる用途ではなく、「どこでもデスクトップ級のパフォーマンスを得られて、最終的な仕事を終える時間が短い」ノートパソコンを狙ったのがZシリーズ、ということである。

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