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既存の検索に比べて100倍速い理由は独自DBにあり

JALのコマースサイトで採用されたSpookとは何者?

2010年02月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月24日、企業向けデータベースの検索プラットフォーム「Spook」を提供するフォルシアは、日本航空(JAL)の国外・海外ツアー販売サイト「JAL eトラベルプラザ」へのSpook導入に伴う記者発表会を行なった。

膨大なデータから「情報」を取り出す技術

フォルシア代表取締役社長の屋代浩子氏

 フォルシアは2001年に設立されたITベンチャーで、検索プラットフォーム「Spook」をWebサイトに対して提供している。あまり知られていないが、膨大なデータから必要な情報をスピーディに持ってこられるということで、JTBや日本旅行、ANAセールス、JALツアーズ・JALパックなど旅行業界大手がこぞって採用している。

 Spookは人間の判断をサポートすることを目指した検索プラットフォームで、高速に処理結果を表示できるのが最大の特徴。これを実現するため、既存データベースからデータを取り出し、PostgreSQLに拡張を施した独自の検索最適化データベースを構築する。これにより、Spookでは従来の水平的な検索ではなく、付帯情報も含めた垂直的な検索を実現できるという。

通常の検索と検索最適化データベースとの比較

 フォルシア代表取締役社長の屋代浩子氏は「たとえば全国の宿からプールがある宿を探すという場合、従来の検索エンジンはデータベースを全部をなめて抽出したり、あらかじめ抽出データを作っておく必要があった。Spookは単純に『プールがある』という条件だけではなく、それに付随する属性を持ってくる。さらにユーザーが行なう次のアクションまであわせて検索を行なうので、ユーザーの欲しい情報にすぐに行き着く」と説明する。

検索結果への不満から離脱率90%!

 このSpookのメリットを見込んで導入を行なったのが、日本航空(JAL)である。JALは国外・海外ツアー販売サイト「JAL eトラベルプラザ」のリニューアルを機にSpookを導入し、検索パフォーマンスとユーザーの使い勝手を向上させた。発表会では日本航空インターナショナル WEB販売室室長 佐々木康人氏とWEB販売室マネージャーの丸山貴史氏がSpookの導入に際して講演を行なった。

日本航空インターナショナル WEB販売室室長 佐々木康人氏

WEB販売室マネージャーの丸山貴史氏

 JALのEコマースサイトの規模は、2億PV/月、UUで300~400万/月、年間で2000億円規模の売上があるが、ツアーの販売に大きな課題を抱えていたという。佐々木氏は「航空券の販売は比較的ユーザーのニーズがつかみやすいが、旅行商品はEコマースでの販売に課題があった。実店舗に比べて、お客様の望む商品を提示できていなかった。そこでSpookを導入し、『ツアー商品販売のリブート』としてスタートした」と語る。

 丸山氏は同社のツアーサイトの課題に関して、「今までは10万件以上あるツアーのうち、従来の検索は目的地、国、都市、出発地、出発日などを指定しないと、最初の画面に行けなかった。しかもハワイを例に取ると、1回の検索で1181件の検索結果が出てしまう。それを1枚ずつ調べないと、欲しいツアーが見つからない」といった課題があった。顧客からは検索結果が多すぎるという苦情が毎月かなりの数上がっており、調べるとなんと90%の顧客が離脱していたという。

ハワイを例に検索した場合、5項目入力して結果が1181件となった

使いやすい検索とはなにかを考えたJALの要素分解

 そこで顧客がツアーを選ぶ際の検索項目や入力項目、雑誌の調査を基に調べてみると、決定事項としてはっきりしているのは「誰と行くか」という部分だけで、その他は「ぼんやり」としか決まっていないことがわかった。こうした結果を基に、Spookでの複数の絞り込み条件を設定しておき、顧客はキーワードを打ち込まずとも、目的地や出発日、利用人数などをクリックしていくだけで結果がすぐ表示されるというサイトになった。また、検索結果がゼロの場合は先回りで検索した次善の結果を表示し、顧客の離脱を防ぐ。さらに、Excelファイルに「行き先」や「フラグ」、「画像」など複数指定するだけで、絞り込み結果と特集を構築する機能も用意された。

 丸山氏は「既存システムを改修をしないで、データのみをSpook側のサーバーに持ってくることで処理負荷やコストも減らせた。また、使い勝手がよくなったことで、今まで避けていた検索を中心に持ってきたサイトデザインを行なえるようになった」とSpookを高く評価した。

 今後、Spookはその検索能力を幅広いEコマースに役立てるべく、宿泊サイトの横断検索を行なうASPサービスや商材を横断した検索、さらには企業を横断した検索なども展開していくという。

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