企業ネットワークの屋台骨となるスイッチにも選び方のトレンドがある。コスト削減を目指すのであれば、不要な機能を削り、重要な機能を残すメリハリ投資で対応しよう。ここではコスト削減につながるいくつかの方策を紹介しよう。
レイヤ3スイッチの機能は
どこまで必要か?
ご存じのとおり、一言でスイッチといっても、レイヤ2(以下、L2)とレイヤ3(以下、L3)の違いがある。L2スイッチではEthernetレベルの単純なパケット転送しか行なわないので、ホストを束ねるのに利用される。一方のL3スイッチは、VLANを単位としてIPルーティングまで実現する。そのため、LAN内の異なるサブネットを区切る場合は、おのずとL3スイッチが必要になる。
従来、スイッチを購入する際はL2スイッチか、L3スイッチかという単純な選択でよかった。しかし、昨今ではやや状況が異なっており、L2とL3の境界があいまいになっている。個人やSOHO向けのボックス型スイッチはともかく、企業向けのスイッチの多機能化はめまぐるしいくらいで、パケット転送やVLANなどはもちろん、検疫ネットワーク、QoS、冗長化プロトコルなど幅広い技術を搭載する。L3スイッチはこれらに加えて、ルーティングやパケットフィルタリング、マルチキャスト、VRRPなどL3冗長プロトコルの機能を搭載する。正直いって、すべての機能を使いこなすのは困難だし、その必要もない。そのため、コスト削減を実現するには製品選びで工夫する必要がある。
まずは、ここ数年で台頭してきた低価格L3スイッチを狙う。たとえば10万円を切るバッファローの「BS-G3024MR」や48ポートモデルも用意されているネットギアの「GSM7248R」などのスイッチは、インテリジェントスイッチにスタティックルーティングの機能を加えたユニークな製品。VLAN間でのハードウェアルーティングが可能で、IPフィルタリングも行なえるので、社内LANでのサブネット間通信にはこれで十分というところも多い。
また、ギガビットではなく、あえて100Mbpsにすることで低価格化を実現した「HP ProCurve 3500」のようなL3スイッチもある。もちろん、ギガビット化を見越した企業ではなかなか導入しにくいが、小規模な拠点でL3スイッチという目的が明確なのであれば悪くない選択肢だ。
必要なオプションを見極める
スイッチの導入で気をつけたいのが、オプションのコストだ。本体はそれほどでもないのに、オプションを追加していったら、高額になってしまったということはよくある。
オプションとなるのは、動的ルーティングやIPv6、RADIUSサーバー、マルチキャストなどを実現するソフトウェアライセンスである。こうした機能の導入を賢く行なうことで、コスト削減につながる。
たとえば、OSPFは別途ライセンスが必要になる場合が多いが、アライドテレシスの一部のL3スイッチでは、OSPF v2の65ルート以上まではフューチャーライセンスを必要としない。一方でネットギアやH3Cの製品では、IPv6を標準サポートしているモデルもある。価格を調べる際には、自分の利用したい機能がオプションに含まれていないかをきちんと確認しておきたい。
また、インターフェイスやケーブルに関しても気をつけよう。たとえば、ギガビットでの接続に必要なGBICやそれらを接続するためのケーブルは意外と高価だ。特に複数のスイッチを積み重ねることでポートを増設するスタッカブルスイッチの場合、専用のスタックケーブルがかなり高価になる。いずれにせよ、将来的な拡張や増設を考えるのであれば、あらかじめコストを算出しておいた方がよいだろう。
コアスイッチもボックス型で
企業のコアスイッチというと、信頼性の高いシャーシ型という場合も多い。しかし、インターフェイスやパケット処理エンジンをモジュラー化したシャーシ型スイッチは信頼性が高い分、概して高価だ。また、スペースや電力を消費するとともに、構成が複雑になるという問題点もある。
こうしたシャーシ型スイッチの課題を克服すべく登場したのが、ボックス型スイッチをコアスイッチとして利用するというコンセプトだ。アライドテレシスの「CentreCOM x900シリーズ」や、BoxCoreを訴求する日立電線の「Apresia13000-24GX-PSR」、汎用ネットワークインターフェイスで複数スイッチをクラスタ化するIRF(Intelligent Resilient Framework)を採用するなどH3Cの「S5600」などが挙げられる。機器のコンポーネントを冗長化するシャーシ型スイッチに対して、これらのボックス型スイッチでは、回線や経路、ゲートウェイ自体の冗長化を容易にする技術に重視されている。シャーシ型に比べて、筐体もコンパクトで、価格も低廉なので、リプレイスの際は検討してもよいだろう。
ハイローミックスをきわめよ
コアスイッチには高価で信頼性の高い製品を用い、ディストリビューションやエッジを安価なスイッチで抑えるというハイローミックスは、コスト削減でよく用いられる手法だ。上から下まで同じベンダーというのは、保守の面でコストメリットが大きくない限り、もはやあまり用いられない。Ethernetの世界では、IEEE802.3の規格に準拠している限り、相互接続はできて当たり前。であれば、エッジ部分は安価な機器でまとめてしまったほうが、コスト削減につながる。
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