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流行の外気冷却でどこまで効率化できるのか?

クラウドを冷やせ!IIJコンテナ型データセンターへ潜入

2010年02月18日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月15日、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、2月1日から開始しているコンテナ型データセンターの実証実験をプレスに公開した。外気冷却方式という新しいトレンドを取り入れた同社とパートナーの取り組みを見てみよう。

低コストと省電力を目指し
時代は外気冷却へ

 コンテナにラックとIT機器を詰め込んだコンテナ型データセンターをご存じだろうか? 米国ではグーグルやヤフー、マイクロソフトなどのクラウドプレイヤーを中心に導入がスタートしており、モジュール単位で手軽に増やせる次世代型データセンターとして注目を集めている。

 こうしたなか、2009年の11月にIIJもコンテナ型データセンターの実証実験開始を発表した。IIJのほか、コンテナ開発担当のNLMエカル、防災設備担当の能美防災、ラック担当の河村電機産業、そして空調設備担当の東芝などが実験に参加している。今回は中部の某所に設置されているこのコンテナ型データセンターと実証実験を見学することができたので、レポートする。

 まずはコンテナ型データセンターのユニットの外観をご覧いただこう。コンテナ本体は長さ約8.6m、幅と高さがともに3mくらいで、日本軽金属グループのNLMエカルのお手製。なかには9本のラックが備え付けられており、IT機器を設置するITモジュールとして使われる。そして、このコンテナは東芝製の空調モジュールと2つのダクトで接続されており、さらに空調モジュールは室外機とつながっている。これらのユニットを複数組み合わせて、1つのデータセンターを構成することになる。

今回実証実験で使われているコンテナ型のデータセンターユニット。ラックやIT機器を搭載するITモジュールと空調モジュールで構成される
コンテナの後ろに接続されているのが空調モジュールと室外機。ここから外気を吸排気する

 さて、今回の実験でなにを実証するのかというと、自然環境を有効活用する外気冷却がどの程度効果があるかという点だ。

 昨今、データセンターでは電力消費を抑えるいわゆる「グリーン化」の流れが加速しており、大量の熱を発生させるIT機器をいかに効率的に冷却するかがテーマとなっている。効率的な冷却が可能になれば、データセンター事業者の負担になっている電気代を大幅に下げることができ、競合に比べて安価にサービスを提供できる。

 「今までIIJも、管理の自動化やIT機器の大量調達、省電力サーバーの導入推進などを進めてきたが、冷却の効率化により電気代を抑えられれば、さらに40%程度のコストを削減できる」(IIJサービス事業統括部 データセンター事業統括部 部長 久保力氏)とIIJの鼻息も荒い。グリーン化の指標であるPUE(Power Usage Effectiveness)も、グーグルのデータセンターの肉薄する1.2を目指すという。現状、日本では2.0を切るデータセンターもまだ多くないため、通年でこれが実現できれば、かなりエコなデータセンターといえるだろう。

今回実証実験について説明する IIJ サービス事業統括部 データセンター事業統括部 部長 久保力氏

 これを実現するためにIIJのコンテナ型データセンターでは、通年で外気冷却方式を取り入れることにした。従来、多くのコンテナ型データセンターは水冷方式を採用してきたが、水冷方式では冷水を作るチラーという装置がいるほか、そもそも水の供給が必要になる。これに対して外気冷却はまさに自然の冷却パワーを使うので、エコロジー効果は抜群。吸排気を制御する空調モジュールのほかは、特別なものは必要ない。IIJでは、この外気冷却方式を通年で採用するコンテナ型データセンターは国内初としている。

外気によって動作モードが変わる
外部冷却の仕組み

 今回の実験のキモである外部冷却の動作について見ていこう。

外部冷却方式の空調モジュールの概要。気温にあわせて3つの動作モードがある

 上図はコンテナ型データセンターユニットを上から見たものだ。ITモジュールを見ると、設置されたラックを挟んで、2つの部分に分割されているのがわかる。IT機器の前面にあるのが冷たい空気のあるコールドアイルで、IT機器に背面にあるのが排気された空気があるホットアイルだ。そして、空調モジュールには外気を吸排気するファンユニットと、冷房にあたる冷却ユニットで構成される。この2つのユニットを使って、コールドアイル側に冷たい空気を送り込み、熱源となるIT機器を経由し、ホットアイル側から暖かい空気を排出するというのが、基本的な外気冷却のイメージだ。

 そして動作モードには3つある。まず冬期はファンユニットで冷たい外気を取り込んで空冷する。取材日当日の気温は8度だったので、外気を取り込めばかなりの冷却効果が期待できる。ただ、単に外気を取り込むだけではない。「冷やし過ぎると、湿度が上がり、結露につながる。ですから、排気側の暖かい空気を外部からの吸気に混ぜることで、低くなりすぎないように調整している(久保氏)」という。冬期はこの「混合運転モード」を利用することが多くなりそうだ。

 逆に春や秋は排気を混ぜず、外気をそのまま取り込む「外気運転モード」で、適切な温度になる。そして、高温・多湿な夏期は、冷却ユニットとファンユニットを併用する「循環運転モード」に切り替わる。これら動作モードの切り替えは、東芝製の空調モジュールの制御システムで自動的にコントロールされ、温湿度の状態はPCから確認できる。

 このうち循環運転モードは、いわば通常のデータセンターと基本的に同じだ。そのため、今まで以上の省電力化を実現するには、混合運転や外気運転モードでなるべく多くの期間をカバーする必要がある。実験では年間を通して、どの程度省電力化が図られるかが検証されることになる。

 ちなみにコンテナというと夏期は内部が相当暑くなるというイメージがあるが、きちんと断熱されているため、極端な冷却は必要ないそうだ。そもそも多くのIT機器は10~35度程度で正常動作するので、20~25度という冷却はサーバーたちにとっても「冷やし過ぎ」なのかもしれない。

(次ページ、あえて古いサーバーを大量投入)


 

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