見学用iPhoneアプリは学生二人の共同制作
今回の酒蔵見学用アプリは、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)の学生である、山本高司さんと相磯達也さんが卒業制作として作ったもの。「酒蔵とIT」という一見ミスマッチな取り合わせや、ユニークな認識方法を採用した理由を探るべく、山本さんにお話をうかがった。
── 酒蔵とiPhoneというのはいささか不釣り合いな組み合わせに思えますが、千代菊酒造さんとのコラボレーションはどうして始まったのですか?
山本さん:IAMASのオープンキャンパスに千代菊酒造の岡本副社長が参加されたのがきっかけです。それがご縁となって私の参加しているDITコースで、「若い人に日本酒を広めるにはどうすればいいか」というテーマのゼミが開かれました。
私たちはIAMASの「iPhoneスタディグループ」でiPhoneアプリの制作を学んでいましたので、今回のiPhoneアプリの元になるものは作っていました。それを土台にさらに開発を進めて、今回、案内アプリを用意しました。
── 開発期間はどれくらい?
山本さん:開発は初期段階のものからガラリと変えたこともあって、学校の後期をほぼ丸々使いました。だから約半年です。
── タッチパネル認識というやり方にとても感心したのですが、どうしてこの方法を思いつかれたのでしょうか?
山本さん:iPhoneでは画像解析やGPS情報などさまざまな情報取得方法があると思いますが、そういう技術を使うのが難しいという事情がありました。簡単でその場所に行かなければできないことを実現したいと考えて、今回の方式を思いつきました。
── このアプリをApp Storeで公開する予定はありますか?
山本さん:アプリに関しては酒蔵の公開に合わせて作ったものですので、App Storeで公開する予定は特にありません。これから別に何か公開できればいいと考えています。
お恥ずかしい話ながら、筆者は今回取材に訪れるまで岐阜県についてもIAMASについてもほとんど何も知らなかったのだが、IAMASは日本でもいち早くiPhone開発講座を開設したり、銀座のApple Storeで積極的にiPhoneに関するプレゼンテーションを行なうなど、iPhoneに対して非常に積極的な組織だ。
また、岐阜県自身も「iPhone塾」と称してiPhoneアプリの開発講座を設置している。中部圏のIT産業拠点として1996年に大垣市に設立された「ソフトピア」には、「頓智・」や「FEYNMAN」、「グルーヴシステムズ」といったiPhoneアプリの開発企業が進出しているなど、今や岐阜県はiPhone/スマートフォン産業において重要な地位を占める地域になりつつある。
IT産業関連の話題は、とかく東京に集中しがちなイメージがあるが、これからは中部地方発の新たなパワーにも注目したい。
もちろんお酒もお勧め!
ところで、今回の酒蔵公開が行なわれた「千代菊」だが、こちらもiPhoneアプリに負けず劣らず、素晴らしい酒だった。筆者はどちらかというと日本酒は苦手なほうなのだが、非常に口当たりがよく、とても飲みやすい。
特に香り高い吟醸酒は、女性や日本酒を好まない若い人にも受け入れやすいだろう。20歳以上で日本酒好きの読者諸兄には、ぜひ一度試していただきたい銘柄である。