「Phenom II X2 555 BE」ほか新CPU5つを一気に検証

文●宇野 貴教

2010年01月30日 12時00分

 AMDは、45nmプロセス製造でSocketAM3に対応する5種類の新CPUをリリースした。その内訳はPhenom IIが2つ、Athlon IIが3つ。Phenom IIは4コア低消費電力モデルと2コアモデル、Athlon IIは2/3/4コアそれぞれ1モデルずつが投入され、いずれも従来ラインナップの最上位モデルから動作クロックが0.1GHz前後引き上げられている。

 モデルナンバーや動作クロック、TDP、発売日などの詳細は下の表で確認して欲しい。今回の新CPU群を見ると、Phenom II X4の最上位とAthlon IIの低消費電力版を除いたモデルにおいて満遍なくスペックアップが行なわれたことになる。ユーザーの利用目的や投入コストに合わせて、2~4コアの幅広いCPUをリリースするAMDらしさがよく出たラインナップと言えるだろう。

CPUスペック表
  Phenom II X4 910e Phenom II X2 555BE Athlon II X4 635 Athlon II X3 440 Athlon II X2 255
開発コード Deneb Callisto Propus Rana Regor
コア数 4 2 4 3 2
動作クロック 2.6GHz 3.2GHz 2.9GHz 3GHz 3.1GHz
L2キャッシュ 512KB×4 512KB×2 512KB×4 512KB×3 1MB×2
L3キャッシュ 6MB 6MB - - -
TDP 65W 80W 95W 95W 65W

 まずはCPU-Zで各CPUを見てみよう。動作電圧は、低消費電力版となるPhenom II X4 910eが約1.15V、その他は1.3~1.4Vとなっており、このあたりに大きな変更点は見られない。気になったのはPhenom IIの2モデルはリビジョンがC3ステッピング、Athlon IIの3モデルはC2ステッピングになっていることだ。C3ステッピングの製品は'09年末から見かけるようになっていたが、従来のC2ステッピングの製品と混在して販売されていた。ユーザーにとっては新しいほうが欲しいが、ショップがC2かC3かをアナウンスしていないと、買ってみるまではわからないという状況であった。今回の新Phenom IIがすべてC3ステッピングで統一されているならば、安心して購入できるようになるだろう。

ベンチマーク環境

 それでは各種ベンチマークを計測してみよう。今回は比較CPUとして、Phenom II最上位モデルとなる「Phenom II X4 965BE(4コア、3.4GHz動作)」と、そのほかに「Athlon X4 630(4コア、2.8GHz動作)」「Phenom II X4 905e(4コア、2.5GHz動作)」、「Phenom II X3 705e(3コア、2.5GHz動作)」の合計4つのCPUを用いている。

テスト環境
CPU Phenom II X4 910e
Phenom II X2 555BE
Athlon II X4 635
Athlon II X3 440
Athlon II X2 255
Phenom II X4 965BE
Athlon X4 630
Phenom II X4 905e
Phenom II X3 705e
マザーボード ASUSTeK「M4A785TD-M EVO」(AMD 785G)
メモリー DDR3-1066 2GB×2
HDD Seagate「ST3160812AS」(160GB)
OS Windows 7 Ultimate(32bit)

※お詫びと訂正:記事初出時「Phenom II X2 555BE」と「Athlon II X2 255」のスペック表記に一部誤りがありました。正しい表記に訂正してお詫びいたします。(2010年1月31日)

(次ページへ続く)

Sandra 2010

 まずはCPUの演算能力など各種要素を細かく計測できるSiSoftwareの「Sandra 2010」から「プロセッサの演算パフォーマンス」と「マルチメディア処理」を実行した。スコアを1コア1動作クロックあたりの数値に換算して見ると、どの要素もすべてのCPUでほぼ近い数値になっている。そのため、新CPUはほぼクロックアップ分のパフォーマンスアップが行なわれていることがわかる。

CINEBENCH R10

 3DCGレンダリングの速度を計測する「CINEBENCH R10」では、L3キャッシュを搭載するPhenom IIシリーズのほうがクロック単位のパフォーマンスが高い傾向が見られる。このベンチのように、実アプリにおいては大容量L3キャッシュを搭載するPhenom IIシリーズのほうがAthlon IIよりも良好な結果を残す場合が多くなるだろう。

(次ページへ続く)

AviUtl

 続いてはx.264エンコーダを用いて、2分のSD動画をエンコードするのに要した時間を計測した。このテストはやはりコア数が多いほうが圧倒的に有利で、4コアCPUのスコアのよさが目立つ。なかでもAthlon II X4 635は、最上位のPhenom II X4 965 BEにかなり近づいてきており、エンコード目的のユーザーにはコストパフォーマンスの高いCPUになったと言える。

各種メモリ速度

 次はSandra 2010を用いて各種メモリ速度を計測した。メインメモリはかなり幅が出る結果となっており、4コアCPUのほうが良好な結果が出るようだ。キャッシュ速度はコア数と動作クロックが関係するため少々比較がややこしいが、L1キャッシュに関しては1コア1クロックあたりの速度はどのCPUもほぼ同じ数値になっている。ただ、L2キャッシュはAthlon II X3 440とPhenom II X3 705eの2つが、その他よりも10%以上良好な数値になっている。両者とも3コア製品であり、このあたりになにか要因があるのかもしれない。

3Dゲーム関連

 3Dゲーム関連のベンチマークは、PC Mark VantageのGamingと、やや古いが「FINAL FANTASY XI Benchmark 3」の2つを計測した。前者はコア数が多いほうが、後者はシングルスレッド性能が高いほうが有利なテストとなる。このほかにBIOHAZARD5ベンチマークを計測したのだが、すべてのCPUでほぼ同一のスコアになったため除外している。今回はチップセットAMD785内蔵のRADEON HD4200を用いているため全体的にスコアは高くないが、ある程度の傾向はつかめるだろう。
 PC Mark VantageのGamingは4コアCPUが良好なスコアになる傾向が見られるが、3コアのAthlon II X3 440もかなり健闘したスコアになっている。コストパフォーマンス重視でミドルレンジのビデオカードと組み合わせるCPUとして狙い目かもしれない。FINAL FANTASY XI Benchmarkはシングルスレッド動作なので、ほぼ動作クロックに比例したスコアになっている。ライトなネットゲームなどでは、L3キャッシュがあり動作クロックの高いPhenom II X2 555BEが有利だ。

(次ページへ続く)

消費電力

 最後に消費電力を見てみよう。アイドル状態はCnQオンで、高負荷状態はSandraのマルチメディアテスト計測中の消費電力をワットチェッカーで計測した。新CPUの中ではやはりAthlon II X4 635の消費電力が高く、アイドルと高負荷時の差が90W近くになる。逆にAthlon II X2 255は50Wとかなり低く、ある程度のパフォーマンスと低消費電力の両立を狙うにはよいCPUと言えそうだ。低消費電力版のPhenom II X4 910eは、前モデルのPhenom II X4 905eから消費電力が2Wほどアップしているが、この程度であれば許容範囲だろう。

着実なパワーアップの新CPU

 今回の新モデルは、Phenom IIの最上位モデルや超低消費電力版のリリースはないためインパクトには欠けるものの、地味な積み重ねが豊富なナインナップの多くに行なわれている。こうしたすべてに少しずつ性能アップというのは、実にAMDらしい戦略と言える。販売価格はPhenom II X4 910eが1万8000円前後だが、そのほかは13000~8000円と購入しやすい価格帯に集中しており、コストパフォーマンス重視でマシンを組み上げたい人にとっては、注目したいCPU群となるだろう。

【関連サイト】

■関連記事