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週刊 PC&周辺機器レビュー 第39回

「ThinkPadのネットブック」? ThinkPad X100eを試す

2010年01月15日 12時00分更新

文● 池田圭一

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シングルコアのAthlon Neoは力不足か

 X100eやEdgeから採用されたVision Proプラットフォームの性能も気になるところだ。X100eでは、AMDが2009年1月にAtom対抗として発表した省電力プロセッサーのAthlon Neo MV-40(1.60GHz)をCPUに、チップセットにはAMD M780Gを搭載する。Windows 7のエクスペリエンスインデックスは、総合値で「3.1」。総合値だけなら、Core 2 Duo搭載のCULVノートである「dynabook MX」(3.2)や、「Acer Aspire 1410」(3.2)と似ているが、細目に目をやると大違いなのがわかる。

 CULVノートでは、グラフィックス/ゲーム用グラフィックスが最低の「3.2」で、プロセッサーは比較的高く「4.3」である。一方のX100eでは、最も低スコアなのがプロセッサーの「3.1」で、ゲーム用グラフィックスはむしろ高く「4.9」となっている。

X100eのWindowsエクスペリエンスインデックスの値

X100eのWindowsエクスペリエンスインデックスの値。珍しくプロセッサーのスコアが足を引っ張る結果となった

 X100eでCPUスコアが振るわないのは、CPUのMV-40がシングルコア/シングルスレッド処理のCPUだからだろう。タスクマネージャーでプロセッサー使用率を見ても、操作のたびに使用率が跳ね上がる。高負荷アプリケーション実行中にほかの操作をおこなうと、ひっかかりが気になることもあった。

 一方、エクスペリエンスインデックスからも判るように、AMD M780Gが内蔵するGPU「Mobility Radeon HD 3200」の描画能力は、このクラスのモバイルノートとしてかなり優秀だ。HD動画の再生支援機能を持つこともあって、メディアプレイヤーでH.264 AVC動画を非常にスムーズに表示できている。もちろん、Windows Aeroの透明ユーザーインターフェース表示に何も問題なく、タスクバーでのサムネイル表示やウィンドウの移動など、どれもストレスなく動作していた。ただ、せっかくRadeon HD 3200があるのに、HDMI出力端子がないのは残念だ。

H.264 AAC動画再生時のタスクマネージャー

H.264 AAC動画再生時のタスクマネージャー。CPU負荷は10%台半ばで留まっており、mp3ミュージックの再生時とほぼ同等


BTO選択での悩みどころはバッテリー?

 モバイルノートとして気になるバッテリー駆動時間は、約5.3時間(約5時間)。ただしこれは、店頭販売モデルの標準6セルバッテリーでの値だ。付属ユーティリティー「省電力マネージャー3」の残り時間表示では、「パワー源最適化」設定を選び、バックライト輝度を最低にしたときに約5時間、同じモードでH.264動画再生中は約3時間程度と表示されていた。バックライトの輝度はバッテリー駆動時間にそれほど影響しないようだが、日常的に使うなら4時間程度と考えるとよさそうだ。なお、直販モデルでは3セルバッテリーが標準となっていて、その場合駆動時間は半減する。

 このバッテリーの選択は、なかなか悩むポイントではなかろうか。デザインを考えるなら、本体にすっきり収まって液晶ディスプレーが180度開く3セルバッテリーを選びたいが、駆動時間が短い。6セルバッテリーの駆動時間は魅力的だが、本体背面に直径約2cmの黒い棒がくっついた不恰好さが気になる。

6セルバッテリーを外した状態

店頭販売モデル付属の6セルバッテリーを外した状態。底面が大きな1枚の樹脂パネルで覆われていることにも注目したい

 もっとも、直販サイトではどちらのバッテリーも単体で購入できる。3セルと6セルの両方を用意し、シーンに応じて使い分けるのもよいだろう。

付属ACアダプター

付属ACアダプターは、ThinkPad X60/61などと共通の65W・20Vタイプ。使いまわしの利く共用品が多いのもThinkPadシリーズの利点

 直販サイトでのオンライン購入時にはほかにも、OS(Windows 7 Home Premium/Professional、Windows XP Professional)、カラーバリエーション(ブラック/レッド/ホワイト)、メモリーやHDD容量、英語/日本語キーボードなどが選択できる。最高構成では10万円以上となるが、最小構成では約6万円程度とネットブック並み。構成も柔軟で、モデル構成がほぼ固定化されていたIdeaPadと比較すると、かなりの自由度がある。

 最後になるが、底板を外した状態も紹介しておく。7ヵ所のネジを外すと、底面のほぼ全面を覆うパネルを外すことができ、内蔵HDDやメモリースロットなどが露出する。そのため、内蔵コンポーネントへのアクセスは容易である。試用機は製品とは異なる構成であり、ワイヤレス通信モジュールが全部盛り(Bluetooth、無線LAN/WiMAX、WWAN)状態で、基板上にはSIMカードスロットも見える。

 ただし、製品版で購入できるのは、今のところBluetoothと無線LAN(11b/g/n)のみとなっている。レノボに限らず、「SIMスロットは持っているが、日本向け製品では3G対応なし」というモバイルノートは昨今多い。ハードウェア設計がワールドワイドで共通化されているためだ。

底面パネルを外した状態

底面パネルを外した状態。HDD、メモリースロットには容易にアクセスできる

内蔵HDDの構成

参考までに内蔵HDDの構成を見てみた。OS起動時間の短縮などを実現した「Lenovo Enhanced Experience」と関係し、約1.2GBのシステム領域が設けられている。またリカバリー用にも約9.8GBを使用する

 今回は短期間の試用ではあったが、OSの起動・終了が高速になるという「Lenovo Enhanced Experience」によるWindows 7への最適化も実感することができた。全体を通しての印象は「X100eはよい意味でも悪い意味でも、やはりThinkPadだ」と言うものである。

 エントリーユーザーにとってみれば、国内メーカーのCULVノートなどと比べてとっつきにくさもあるが、ThinkPadに慣れているなら必要な機能をコンパクトに、かつ低コストに集約したX100eの機微に気付くと思う。注文した筆者の場合は、多少ひいき目で見ていることは否めないのだが、とにかく、持ち歩いて仕事をしたくなるマシンである。

ThinkPad X100e(個人/SOHO向け) の主な仕様
CPU Athlon Neo MV-40(1.6GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス AMD M780Gチップセット内蔵
ディスプレー 11.6型ワイド 1366×768ドット
ストレージ HDD 250GB
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1
インターフェース USB 2.0×3(うち1はPowered USB)、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅282×奥行き209×高さ26.5mm
質量 約1.5kg
バッテリー駆動時間 約5.3時間
OS Windows 7 Home Premium 32bit版
価格 5万9850円

筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


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