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BIとは? 基礎からわかる最新BI事情 第1回

BIツールの現状を知る

「先輩、BIって知ってますか?」― 知識ゼロから学ぶBI

2010年02月05日 09時00分更新

文● 鹿取裕樹/ビーブレイクシステムズ、TECH.ASCII.jp編集部

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BIツールの現状

 これまでにご説明したBIを実際に導入する場合、多くの場合は何らかの既製のBIツールを利用することになるだろう。では、現在どのようなBIツールが入手可能なのであろうか。次の表に主な中堅企業向けのBIツールの特徴をまとめた。

表1 主な中堅企業向けBIツール

製品名 Business Objects Edge Oracle Business Intelligence Standard Edition One Cognos
会社名 SAP 日本オラクル IBM
特徴 中堅企業向けの低価格版。 アドホックレポーティング・分析・ダッシュボードからデータ統合までをカバーする(範囲はエディションによる)。 中堅企業向けの低価格版。 BI、DWHの機能をオールインワンで提供する。 SOA上でレポート、分析、ダッシュボード、スコアカードなどのBIに必要な機能を提供する。
その他 2008年仏ビジネスオブジェクツを買収。 2007年米ハイペリオン・ソリューションズを買収。 2008年加コグノスを買収。
製品名 SQL Server Dr. Sum Pentaho BI Suite Jaspersoft BI Suite
会社名 マイクロソフト ウイングアーク ペンタホ ジャスパーソフト
特徴 DBにBI機能が組み込まれている。 OLAP分析、スコアカード、データ統合などの機能を持つ。 Excel、SharePoint Serverなどと組み合わせてBIを実現する。 純国産のBIツール。「多次元高速集計レポーティングツール」から発展。操作のシンプルさが特徴。オプションによりダッシュボード、高度な分析、Webレポーティングが可能。 米ペンタホが開発するコマーシャルオープンソースのBIスイート。強力なデータ統合機能を持つ。 無償版でも多くの機能を利用可能。 米ジャスパーソフトが開発するオープンソースのBIスイート。洗練されたユーザーインターフェースを持つ。無償版で利用可能な機能は限られる。

 各製品のURLを記載したので、製品の詳細はそちらを参照されたい。

 BIの分野も成熟してきており、基本的なBIの機能はどの製品も満たしているようである。この中で特筆すべきは、Pentaho BI SuiteとJaspersoft BI Suiteである。これらはオープンソースであり、無償で使用することができる。かつBIに必要な機能も一通り備えている。また、有償版も用意されており、有償版は無償版と比べ使用できる機能が増え、開発会社からのサポートを受けることができる。有償版でも価格は商用製品と比較すると格段に安いため、低コストでかつ安心してBIを導入したいという場合、こうした製品も有力な選択肢となるだろう。

 上記の表を見るとBusiness Objects、Hyperion Solutions、CognosなどのBI専業ベンダーがSAP、Oracle、IBMに買収されているのが分かる。買収の背景としては大きく次の2つのものがあると考えられる。

 ひとつは、BIはアプリケーションやデータベースと密接な関連を持っている。こうしたアプリケーションおよびデータベースのベンダーは他社との競争激化の中で自社のソリューションにBIを取り込むためにこうした買収を行ってきたというものである。

 そしてもうひとつは、上述のオープンソースの台頭である。代表的なPentahoやJaspersoftなどは基本的な機能は商用版と見劣りしないレベルになっている。有償のサポートを受ける場合でも商用製品のライセンスや保守料と比較するとかなり低コストに抑えることができる。

 中堅企業などではコストパフォーマンスの良さからこうしたオープンソースを選択することが多くなり、商用BIベンダーの経営環境を厳しいものにしてきたというものである。

BIの歴史

 最後にこれまでのBIの歴史に触れたい。

 BIの起源は古く、1970年代にさかのぼる。このころEIS(Executive Information System)、MIS(Management Information System)などの経営情報システムという考え方が登場した。経営者の意思決定を支援するシステムだったが、当時のマシンのスペックでは実現が難しかったため普及することはなかった。

 1990年代にはDWHという考え方が現われた。この頃のDWHを利用した分析は、一部のパワーユーザーが行う高度な分析に限定されていた。

 そして2000年代になってBIという言葉が広まった。一部のパワーユーザーだけでなく、経営層や一般社員が意思決定のために自分で情報を取得できるようになったのである。

 現在の新しい流れとしてはDWHアプライアンス、リアルタイムBI、CPM、業種・業務特化型BIなどがある。DWHアプライアンスとは、ハードウェアとソフトウェアが初めから組み合わされた製品であり、導入や管理が容易という特徴を持つ。

 リアルタイムBIとは、在庫の滞留などのビジネスイベントが発生したときに、それをいち早く検出し通知するなどというものである。

 CPM(Corporate Performance Management)とはGartnerが提唱した、企業がビジネス・パフォーマンスを監視・管理するために使用するプロセスや方法論、評価基準、システムなどを指す包括的な概念である。BIはこの中に含まれる要素となる。

業種・業務特化型BIは特定の業種や業務に特化したBIである。たとえば金融向けのマネーロンダリング防止アプリケーションなどがある。

 次回はBIツールの機能や構成の詳細と、BIの導入の手順についてご説明する。

著者紹介:鹿取裕樹

著者近影

SAPジャパンにて会計コンサルティングを担当。その後、ビーブレイクシステムズの設立に参画する。

現在は、業務システムのパッケージソフトMA-EYESおよびBIソリューションの導入を担当する。

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