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今、明かされる「ニコ動」「ニコ生」誕生の舞台裏

3日でニコ動を作ったネ申「戀塚氏」に取材してみた

2009年12月28日 12時00分更新

文● 全農連P、広田稔/ASCII.jp編集部

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「伏線回収」でできたニコ動

── 「ニコ動は3日間で作った」という逸話があります。ニコ動に至るまでの経緯を教えていただけますか?

戀塚氏:ニコ動の開発を始める前、私は潰瘍性大腸炎にかかって、1ヵ月以上の入院を2回経験しました。徹夜した結果、悪化して入院に至ったので、仕事をセーブさせてもらっていたんですよ。当時やっていた長期的なプロジェクトも、体調のこともあって詰まっていた。そのプロジェクトは結局、途中で終わってしまったんです。

 その後やっと元気が出てきて、いろいろと力を発揮できるような仕事を振ってくれるようになったんです。そこで覚えたことが、のちのニコ動開発につながっていきます。

 例えば、PHPで作ったプログラムを高速化するという依頼や、ウェブサービスでFlashを扱う仕事なんかをこなしています。どっちも当時は知らなかったんですが、その開発の過程で覚えました。PHPのほうは「100倍速くしてくれ」って話だったんですが、500倍くらい速くしたんですよ(笑)。その覚えたばかりのPHPとFlashが、ニコ動のシステムに生かされています。

ニコニコ動画。現在のバージョンは「(9)」


── 少し前に覚えた知識でニコ動は作られたんですね。

戀塚氏:コメントの仕組みも、大本をたどればお蔵入りになった「携帯用MMORPG」というプロジェクトに行き着くんです。

 ニコ動を語る上で「疑似同期」というキーワードがあります。ユーザーが同じタイミングで動画を見ていなくても、過去に投稿された画面のコメントを見ていると、あたかもほかのユーザーと時間を共有しているような感覚を持ってしまう。テレビのような「同期」とは違う特性があります。

 そんな擬似同期のプロトタイプを見ていたときに、携帯用MMORPGで作ったサーバーシステムを思い出しました。MMORPGなのでチャット機能を付けましたが、そのチャットのログを取っておけば掲示板的に使えるなぁと。

 同じ動画を多くの人が開いていて、その見ているシーンが別々であっても、ほかの人が投稿したコメントがリアルタイムで各ユーザーのところに飛んできてもいいんじゃないか。そう考えて、リアルタイムに感覚を共有できる動画掲示板として設計したんです。

 ただ、初期に開発したコメントシステムは、お蔵入りになってしまいました。開発の途中でHTTPプロトコルしか通らない環境でも使えるように別のシステムを作って、差し替えてしまったからです。

 その初期のコメントシステムは実は「ニコニコ生放送」で使っています。ニコニコ生放送始めるときに最適だと引っ張りだしてきたら、そのまま動いてしまった。だからニコニコ生放送のコメントシステムは、「過去の封印」を解いただけでできあがってしまったんです。

ニコニコ生放送

ニコニコ生放送


── 昔と今がつながっているような話ですね。

戀塚氏:伏線回収したってことです(笑)。


── そのニコニコ生放送では、その場にいなくても見られる「タイムシフト」機能が用意されています。この意図は何ですか?

戀塚氏:ニコニコ動画の「疑似同期」は、そもそもテレビの「同期」よりも新しい概念なんです。そういう意味で、ニコニコ生放送を始めたことで「戻ってしまった」んですよね。

 ただユーザーを見ていると、人を知る機会は「疑似同期」の方が多くて、一度知ってしまうと「同期」に向かうという傾向があります。「疑似同期」→「同期」という順番はコミュニケーションの形で言えば間違っていないんですが、生放送のみだとやっぱり参加できないユーザーが出てきてしまう。だからタイムシフトを用意しました。

 さらに言えば、ニコニコ生放送→ニコニコ動画という流れで、ユーザーをつなぎ止められれば完璧かなぁと。例えば、放送の途中でやっていることを知ったんだけど、最初から見れてコメントもできる「追っかけ再生」機能のようなイメージです。さらに進めば、生放送で追っかけ再生なんだけど、見たいシーンをシークまでできるとか。


── 「ニコニコHDDレコーダー」みたいな感じですね(笑)。それは欲しい。

戀塚氏:現状でも有料のプレミアム会員になっておけば、タイムシフト機能を使って7日間以内に行なわれた生放送を視聴できます.。一般会員は事前の予約が必要ですが……。

ニコニコ生放送のタイムシフト機能は、10月、プレミアム会員を対象に始まった。この24日からは一般会員にも開放されている

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