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ガンダムがザクより強い理由とGoogleの真の目的

2009年12月28日 00時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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 このコラムは、ASCII.jp Web Professionalと「日経ネットマーケティング」「Web担当者Forum」「Markezine」各誌の編集長が、毎回同じテーマでネットマーケティングを語るコーナーです。今回からASCII.jp Web Professionalも参加することになりました。

 今回のテーマは年末らしく「2009年、印象に残ったヒトモノコト」です。他誌編集長のコラムも併せてご覧ください。


 2009年の1月ころ、機械学習の本を作ろうと思って、国立大学の若手研究者とやりとりをしていた。「パーセプトロン」、「SVM(Support Vector Machines)」、「CRF(Conditional Random Fields)」など、一般にはなじみのない用語が飛び交う打ち合わせは刺激的で楽しかったが、先進的な分野だけに執筆の時間が取りにくい、ということになり、企画そのものは頓挫している。

 機械学習は、コンピュータサイエンスでもっとも先進的な研究領域だ。スパムの判定にも使われるベイジアンネットワークや顔認識、音声認識など、さまざまな分野で応用されている。昔からある人工無能は人間の知性を原始的に再現する仕組みだが、最新の研究成果を使うと、普通の会話をする分には機械なのか人間なのか区別が付かない「アタマのよい人工無能」までは実現しているという。

 機械学習の本を作ろうとして、一般の人にも関心を持ってもらうために考えたタイトル候補が「ガンダムはなぜザクより強いのか?」だ。実は、『機動戦士ガンダム』には機械学習的な台詞がいくつか登場する。「ガンダムがザクより優れている理由」を聞かれたアムロが「ザクと違って、戦いのケーススタディが記憶される」と答えたり、ランバ・ラルに苦戦するアムロが「駄目だ。コンピュータのパターンだけでは追いつかない」といったりする。作中でガンダムを説明するときの「教育型コンピュータ」は、英語の「machine learning(機械学習)」の訳語と考えてもおかしくない。

 Webが普及し「誰でも情報発信」の世の中が本当にやってきてしまい、世界中のメディアが青息吐息の状態だ。だが、「先進的な分野で執筆の時間が取りにくい研究者」も中にはいるわけで、Web上にまともな情報が存在しない分野だってあるだろう。グーグルという企業の使命は「世界中の情報を整理」することだとしても、Webにない情報のインデックスをどうやって作るのだろうか、と思っていたら、「Googleブック検索」や「Google Wave」のようなWeb以外の情報をインデックスする事業が次々と登場し、日本の片隅でWebメディアに関わっている身としては、「さすがに世界中のアタマのよい人が集まっている会社は違うなぁ」と感心するばかりである。

 12月に「Google日本語入力」が発表されたとき、「Google」というさまざまなサービスの集合体は、実は人工知能の構成要素なのではないか、という仮説が思い浮かんだ。「世界中の知識をため込んだ人工知能を作る」のが真の目的で、「世界中の情報を整理」するという表向きの目的が実は単なる手段だとしたら、グーグルのやっている、一見突拍子もないことのいくつかは説明が付く。個人的には「人工知能仮説」と呼んでいて、今後のグーグルの動向を予想するのに使えるんじゃないかと思っている。ほとんど妄想なので、普段のコラムには書かない話だが、2009年のキーワードは「機械学習」だった、というのが私の結論だ。

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