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IMEとして「変態」 開発陣が語るGoogle日本語入力

2009年12月24日 12時00分更新

文● 松本淳

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「変態」なIME、Google日本語入力

―― なるほど。この先の展開も注目していく必要がありますね。一方で、MS IMEやATOKといった既存のプレイヤーの存在も無視できない分野です。彼らと組むといった手法を採らずに、あえてゼロベースから開発するという選択をしたのはなぜなのでしょうか?

ソフトウェアエンジニアの工藤拓氏。まったくのゼロベースからIMEを開発した理由は「作る自信があったから」と胸を張る

工藤 一言で言えば「作る自信があった」からです(笑)。私自身、自然言語処理を研究してきましたし、社内でも、まさに小松もそうなのですが、「PRIME」という予測入力型IMEの開発に関わってきた人間も多くいました。それらの経験も踏まえ、Google内の「もしかして」機能などのリソースも活かすことが出来ました。

小松 付け加えると「私たちがゼロからIMEを作るとこうなる」というチャレンジをしてみたかったという点も大きかったと思います。

及川 ブラウザー、Chromeと背景が似ていると言えるかも知れません。実は私自身、MicrosoftでWindowsの開発に携わっていた経験から、ローカルのアプリケーションを作ることはとても大変だということは分かっておりました。

 開発にあたっては「本当に私たちがゼロからローカルでやるべきなのか? 他に選択肢はないのか」という問いかけを何度もしました。しかし、目指すものにするためにはそうするしかなかった、というのが実際のところです。辞書の提供だけでは不十分で、変換エンジンのところまで手を入れてはじめて、求めるものに近づきました。

―― ウェブベースの辞書はもちろん、変換エンジンもまったく異なるわけですね。

工藤氏と同じく、ソフトウェアエンジニアの小松弘幸氏。小松氏はもともとIMEの開発を志望してGoogleに入社した経歴の持ち主

工藤 他社との比較でどう異なるか、というのは申し上げられないのですが、Googleサービスは全体を通じてデータドリブン(機械の計算によるもの)です。

 Google翻訳も、大量のウェブデータと、日本語と英語を紐付けた翻訳ペアから自動的に学習をしています。統計的な自然言語処理の手法は、比較的ありふれた方法を採っていますが、データの量でそれをカバーするという考え方ですね。

及川 ある意味、従来のIMEで採られなかった「変態」的なアプローチです(笑)。けれどブラウザーの世界がそうであったように、IMEの世界もDOSの時代からの変遷を経て、段々とプレイヤーが減っていき、「IMEとはこういうもの」という諦めというか固定観念が生まれてしまった状況ではないでしょうか? Chromeブラウザーのように、そこに刺激を与え、他のプレイヤーと共に再び技術革新を共に生み出していきたいと考えています。

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