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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第97回

情報が「フリー」になる世界でビジネスに未来はあるか

2009年12月16日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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マイクロソフトとマードックのウェブへの挑戦

 今年は海外で新聞社の経営破綻が相次いだ。日本でも、新聞社や放送局が軒並み赤字になり、そのあとを追うだろう。これに対するメディア側の対応策は大きく分けて二つある。無料化の流れに乗ってアクセスを増やす方向と、それに抵抗して在来のビジネスモデルを守る方向だ。

 このどちらが正しいかを占うのが、マイクロソフトとニューズ・コーポレーションの提携をめぐる動きだ。今のところ、両者とも公式にコメントしてないので推測の域を出ないが、マイクロソフトが新しい検索エンジンのBingで、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)などニューズ社のメディアのコンテンツを独占的に表示する代わりに、ニューズ社に料金を支払う意向を伝え、それにニューズ社のオーナー、ルパート・マードックが応じたという経緯のようだ。

 これはグーグルなど他の検索エンジンからWSJが検索できなくなることを意味するので、「インターネットを昔の閉じたネットワークに引き戻す時代錯誤の試みだ」と批判の声が上がったが、実態はよくわからない。WSJへのアクセスの1/4はグーグルから来ており、それを切ることで広告収入が減ると、マイクロソフトからの収入より大きな損害になるかもしれない。マードックのねらいは、グーグルと(ニューズ社の傘下にある)MySpaceとの契約を延長させる取引ではないか、など憶測が飛び交っている。

Google Living Storiess Googleによる実験的な新サービス「Google Living Storiess」。1つのトピックに関するニュースを時系列に表示する

 他方、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストはGoogle Living Storiesというサイトで、グーグルとの連携を強め、アクセスを増やすことで危機を乗り切ろうとしている。これはグーグルがトピックを設定し、それに関連する記事を両社のアーカイブから検索して表示するものだ。これによって検索の順位も上がるので、アクセス増が見込めるが、それが両社の経営危機を救うかどうかは疑問だ。

 公平に見て、どちらも茨の道だろうが、彼らがウェブに対応したビジネスモデルを模索していることは重要だ。WSJにもニューヨーク・タイムズにも共通しているのは、紙の新聞の寿命があと10年もなく、それまでに代わりのビジネスモデルを確立しないと新聞が成り立たなくなるという危機感である。マイクロソフト=マードックの試みは評判が悪いが、いくら「オープンなインターネットを守れ」といっても、ビジネスとして成り立たなければコンテンツが出てこなくなるので試みる価値はある。成功するとは思えないが。

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