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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第62回

ZAKZAK・夕刊フジ創設に携わった記者のネット報道作法

2009年12月07日 12時00分更新

文● 古田雄介

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ZAKZAK運営の技術で個人サイトをスタート

―― まず、「八ヶ岳の東から」を始めたきっかけから教えてください。

日本記者クラブ会員のジャーナリスト・宮崎健氏。70代となった現在も、八ヶ岳の自然とIT、時事情報に触れながら過ごしている。ちなみに、宮崎氏によるとZAKZAKの名称は「当時はYahoo! Japanのディレクトリ検索が中心だったから、それで目立つようにアルファベットの最後のZを頭に使うようにした」という意図もあったとか

宮崎 飼っていたフラット・コーテッドレトリバー犬が死んで、ウェブ上でお参りできる場所を作りたかったというのが直接の理由だけど、その前にホームページを作る技術を身につけたというのが大きいですね。

 少し前まで産経新聞で「夕刊フジ」の営業責任者をやっていまして。1996年2月くらいに、たまたまサーバーが複数台手に入ったから、営業の数字を上げるためにホームページを立ち上げようとしたわけです。当時は社内でも「インターネットって何だ?」という感じだったけど、役員会議でどうにか通して300万円ほど出してもらい、それが同年8月に「ZAKZAK」となった。

 だけど、社内は誰もホームページの作り方なんで知らないから、掲載した後、てにをはの間違いに気づいても技術者呼ばにゃあ直せない。たった1文字でも、場合によっては翌日まで待たないといけないという状態で。それでしょうがないから、これくらい俺が勉強してやってやろうと思って、若い技術者に頭下げてHTMLとか教えてもらってたんです。

 その技術があってこそ個人でもホームページを作ろうと思ったわけで、今もHTML手打ちで全部やってますよ。


―― なるほど。仕事で得た技術で、趣味のホームページも作ってみようというふうになったわけですか。

宮崎 いや、最初の頃はね、お金儲けしようともしたんです。技術者の知り合いがいっぱいできたから、インターネットにペットのお墓を作るサービスを作って儲けようと思ったの。レジ決済で線香や花を買えるようにしてって。でも、当時の話だけど、システムの開発費に1200万円かかるって言われて諦めましたよ。

 ZAKZAKも購読料みたいなものは一切とらずに、企業からの広告掲載料で運営していたんですね。それで黒字になれた。そのZAKZAKとペットのお墓の経験から、やっぱりネットというのは基本的にフリーの世界で、そこから直接お金を得ようというのは至難の業だと思いましたね。電通のデジタルメディア広告局など、ZAKZAKのあとからできたんですから。


―― 儲ける方向は無理と悟りながらも、精力的にコンテンツを増やしていきましたね。やはり、八ヶ岳の自然を伝えたいというのが大きいですか?

宮崎 まあ、誰でも山にいれば「自然と人生」を考えるものです。それに自然を観察すると勉強がてら書きたいことがつぎつぎ出てくる。最初はレトリバーのお墓とお袋の句集ですが、段々増えていった。

 八ヶ岳のログハウスは1987年だから22年前。産経新聞に勤めていた頃に買ったんですよ。働いている当時から、野鳥の餌台「バードフィーダー」を置いたり、高地でも育つ植物を植えたりしています。リタイアした後は山暮らしが多くなりましたが、さすがに冬がつらいから7月から10月まで住んで、寒い時期は都内暮らしという感じですね。


―― ご家族や八ヶ岳関連のコンテンツが並ぶなかで、「ブン屋シリーズ」だけ異質ですよね。サイトを始めて3年後の2002年にスタートされましたが、この意図はどんなところだったのですか?

「ブン屋の戯れ言」コーナーにある記事「よど号事件から30年か」。宮崎氏の事件当時の体験談をまとめた文章がメインだが、ページを下に進むと、膨大な量の事件関連メモが載せられている

宮崎 最初は本職の話は書かないでおこうと思っていたんだけど、やっていくうちに素性がばれてきて、知人から「何か書いてよ」と言われたりして、じゃあと始めたんだと思います。本当にパラパラとという程度で、体験談みたいなものをね。

 だけど、よど号ハイジャック事件のことを書いてからは、ちょっと意識的に更新するようになりました。後輩記者が「今日でよど号事件から何年」という記事を毎年書くんだけど、間違えだらけでね。自分で書いて気づいたんだけど、ネット上にはよど号事件に関する資料が何にもなかったんですよ。あってもバラバラ。あって、警察幹部の自慢話か映画の宣伝くらい。それを今の記者はコピペするから新聞社を横断して間違う。

 それで「俺がきちんとした、コピペに耐えるようなのを書いてやる」というつもりになって。だから、あそこに書いた情報は正確なはずですよ。人の名前や年度も。社会部の後輩であのページを資料に使っている奴もいますね。

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