自分の中で「celluloid」は駄作です
―― つまり趣味なんだけど趣味じゃないみたいな状況になっているわけですね。
baker そうですね。
―― そこをどう割り切っているのか気になるんですが。たとえば7月のブログに「大きな意識の変化があった」と書かれていましたけど、何があったんですか?
baker (曲作りで)自分を制限するところが僕にはあって。完全にテーマを決めて、それを表現することに専念するとか。これは自分の得意なところだからやらないとか。前にやっていないこと、前より良くなっていないとやっていけないんです。それで、これはどこまで言っていいのかな。……音楽友達が死んだんです。
―― えっ。
baker あまり大勢に評価されている人じゃなかったんですけど、とにかく他人とは違っていて、自分には輝いて見えた。そのとき、自分に制限を設定するとかアホだなと。すごく影響を受けたのに、彼にお礼も言ってなかった。それは自分でそういう「制限」を課していて、連絡を取りづらい状況にしてしまっていたためでした。
―― 一時ボーカロイドを止めて、また戻ってきたこともそんな感じなんですか?
baker ちょっとくらいの事ならやり残していてもいいかと思っていたんですね。
―― では逆にニコ動に投稿するようになって得たものはありますか?
baker celluloidを書いたことが収穫でしたね。今までバラードって書いたことがなかったんですよ。それができたのが収穫ですね。あれが初めて書いたバラードみたいなものですよ。
―― ボーカロイド曲の名作と言われていますが。
baker こういう場所で言っていいのか分からないですけど、自分の中では「celluloid」は駄作です。
―― えーっ、クリプトンの社長まで気に入っているというのに。
baker すみません。「サウンド」を褒められるのは嬉しいんですけど、「celluloid」を褒められるとすみませんという感じしかないんです。
KNOTS ……良かった、「サウンド」が好きって言っておいて……。
―― 代表作としてレッテルを貼られるのが嫌だとか?
baker その曲を作っているときに考えていることと、それに対して自分がどれだけできたとか、気になるのはその辺なんです。だからあの曲は何度も作り直しているんです。
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