2010年、大画面テレビのトレンドは“3D”で決まりだ!

文●坪山博貴、ASCII.jp編集部

2009年12月03日 12時00分

 今年の10月に開催された「CEATEC JAPAN 2009」でソニー、パナソニック、シャープが一斉に試作機を公開し、完全に話題の中心となったのが「3Dテレビ」である(関連記事)。

 昔からある3D映像で、まず多くの人が頭に浮かぶのが赤青型のメガネだろう。この方式は右目には左目用の絵を、左目には右目用の絵を打ち消す色のフィルターを装備したメガネを通して見ることで、立体的な表示を実現している。ただし、このような方法では正確な絵の色を表現するのは難しく、悪く言えば子供騙しにすぎない。

 しかしCEATEC JAPAN 2009で公開された3社の3Dテレビは右目、左目用の映像を交互に表示し、液晶シャッターを備えたメガネを組み合わせて、右目には右目用の、左目には左目用の映像だけが見えるようにすることで自然な3D表示を実現した。また各社ともに製品化を意識しての展示となっていたのも印象的だった。

 ここでは試作機を公開した1社であり、2010年での3Dテレビの製品化を目指すソニーの担当者に、Q&A形式でその仕組みや現状をうかがった。

規格化が進んでいるのは
左目用と右目用の映像を高速で交互に映す方式

Q まずソニーの3Dテレビの実現方法を教えてください。

A まずテレビの表示方式としてはフレームシーケンシャル方式を採用しています。右目用、左目用、右目用、と時系列順にフレーム単位で映像を表示する方式です。同時にメガネの方では、右目用の映像表示の時には左目のシャッターを閉じて、左目用の映像の時には右目のシャッターを閉じます。今回お見せしているのはあくまでサンプル機ですが、テレビからメガネへの指示は、IR(赤外線)で送信しています。

Q ソニーで採用している方式は規格化されているんですか?

A 3Dテレビの表示方式に関しては現時点で規格化されているわけではありません。3Dテレビの方式をおおまかに分けると2方式があって、1つ目が今説明したフレームシーケンシャル方式です。

 もう1つがライン・バイ・ライン方式で、奇数ラインと偶数ラインに右目、左目用の映像を同時に表示します。そしてテレビのパネルの前には1ラインごとに右目用、左目用の偏光フィルターが装着されています。そしてメガネ側にも右目には右目用のラインだけが、左目には左目用のラインだけが見えるフィルターが付けられているのです。

 ライン・バイ・ライン方式の場合、その仕組み上、映像の縦解像度が半分になってしまうのが難点と言えます。フレームシーケンシャル方式の場合、右目、左目用の完全な静止画が表示されますので、人間の頭の中で合成される映像でも解像度は維持されます。つまりフルHDの解像度のままで3D表示が可能なのです。

4倍速駆動が液晶での3Dテレビ実現の鍵となった

Q フレームシーケンシャル方式は自発光型デバイスはともかく、液晶テレビでは難しいと聞きましたがどうなのでしょうか?

A フレームシーケンシャル方式を液晶で実現するのは、その特性上従来は難しいとされていました。理論上では倍速表示(秒間120フレーム)であれば、右目用と左目用に毎秒60フレームずつ表示できるのですが、右目用と左目用に交互に表示される映像のクロストーク(干渉)を完全に排除するのが難しいのです。

 そこで4倍速表示(秒間240フレーム)技術を利用することで、右目用、左目用の映像を干渉無く表示して、ソニーが目指す鮮明な3D映像が表示可能になりました。2008年に他社に先駆けて4倍速表示を可能にしたソニーの技術が、今回の3Dテレビのバックボーンになっているのは事実ですね。

Q. とすると、この時期に一斉に3Dテレビが盛り上がってきたのは、パネル技術の進化などで実現可能な時期が到来したという側面があるのでしょうか?

A 4倍速表示が可能になったこととの関係は大きいですね。ソニーの場合、2008年にはまず4倍速表示のテレビを製品化するプラオリティが高く、そして2009年には普及モデルへの拡大を果たしました。2010年にはさらなる付加価値ということで3Dテレビへの応用を目指しています。

Q コスト的にはどうなのでしょう。3D対応テレビは普通のテレビよりとても高くなってしまったりするのでしょうか?

A 実際にどのような形で製品をリリースするかは決まっていませんが、既に発売されている4倍速駆動のモデルに対して、大きく価格が上がることはないという目処は立っています。

 ただしもちろん3Dメガネの分は確実にプラスされます。そもそも付属するのか別売にするのかといったあたりはまだ何も決まっていません。カメラ自体も高精度で高速動作の液晶シャッターに駆動回路、充電式バッテリーなど、それほど簡単な構成でもありません。

Q フレームシーケンシャル方式に対応した3Dテレビで、通常の2Dコンテンツを見るときへの影響はありますか?

A 思いつきません。

日本以上に海外では3Dコンテンツが増加している
3D効果の利用方法にも変化が

Q 3D対応のコンテンツは本当に提供されるのでしょうか?

A ハリウッドでは今年だけでも、20本近くの3D映画が作成されています。日本ではまだそれほどでもないですが、アメリカでは映画館で結構普通に3D映像が楽しまれるようになっています。これを家庭でもという流れが一番大きいですね。

 Blu-rayディスクの標準化を行なっているBDA(ブルーレイディスクアソシエーション)でも、現在BDディスクにどのような形で3D映像を収録するか話し合われている最中で、年内の規格策定を目指しています。コンテンツ自体は当然コンテンツメーカーさんからの提供になりますが、標準化という点も含めて準備は進んでいます。

 ソニーとしてはグループ会社にゲーム事業(プレイステーション3)がありますので、ゲームの3D化も検討しています。またネットワーク経由での3Dコンテンツ配信をどのような形でできるかといったことを検討していますし、放送事業者さんも3D映像にはかなり興味を持たれています。

Q 3D映像はどうやって撮影するものなのですか?

A 基本的には右目、左目用のカメラ2台で撮影します。ソニーには業務用ビデオカメラのビジネスもありますが、今年のCEATEC JAPANでは1つのレンズに2つの撮像素子を使った3D撮影のデモを行なっています。2台のカメラを使う場合、ズームを含めて撮影に関わる要素を2台で揃えないといけないので結構大変なようです。

Q 3D映像と言うと過去の方式では疲労感を覚えた人も少なくないと思います。この点はどうなのでしょう?

A 以前の3D映像というと、意図的に立体感を強調したもの、特に手前に飛び出して見えることを強調していたものが多かったと思います。現在作られている3D映像はどちらかと言えば奥行き感を重要視して、自然な立体感を得られるように収録されているものが多くなっています。実写の場合ですと、撮影段階からそういった意図を持って撮影されている傾向があります。コンテンツベースでも過去の3D映像とは異なるわけです。

3D映像はいずれも圧巻 ゲームは特に可能性大!
ぜひとも一度体験してほしい

 インタビューの後、実際に3D映像を視聴させていただいた。映像はサッカー中継、環境映像、ゲーム画面(CG)が用意されていたが、自然な奥行きを感じる場合が多かった。それでも海中映像でサメが迫ってくる映像は圧巻で、意図的に画面より前に見えるように作成されているとはいえ思わず身を引いてしまうほど。子供が見たら泣いてしまいそうな迫力だった。

 アニメーションでは16:9より横長のコンテンツで、本来黒帯となる部分にキャラクターが飛び出すといった、家庭用テレビで見ることを想定したおもしろいアプローチの映像もあった。3D映像の一般化で、まったく新しい演出手法が登場する可能性は高い。

 また同行した担当編集者が特に興味を持っていたのは、レースゲームとシューティングゲーム(FPS)のデモ映像。「これまでの3Dゲームはあくまで2D上に描かれた3Dだったんだ」と感心をしていた。コンテンツ制作での親和性という部分でも、ゲームが3Dテレビを強力にけん引するコンテンツになるのは間違いない。実際11月に行なわれたソニーの経営方針説明会でも、既存モデルを含めたPS3での3D対応が表明されている。

 左右の目に交互の映像を表示するという仕組み上、チラツキが気になるのではと思ったが、この点でも違和感はなく、チラツキをほとんど感じなかった。過去の3D映像に対する思い込みは捨てる必要があるだろう。2010年の製品化に期待大である。


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