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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 ― 第93回

新聞に明日はないが、活字メディアに明日はある

2009年11月18日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

新聞サイトに固定リンクを

 ただし新聞業界がこの大きな変化に対応するには、発想の転換が必要だ。10月末に、私のブログをgooからライブドアに引っ越した。gooのほうは更新していないのだが、依然として毎日1万人ぐらいのユーザーがいて、gooブログのベスト10に入っている。新ブログの3万人には及ばないが意外に多い。アクセスを解析すると、グーグルの検索やヤフーニュースからのリンクが多い。キーワードで検索すると上位に旧ブログの記事が出てくるので、いわばデータベースとして使われているわけだ。

 これは新聞などのニュースサイトの今後のビジネスに示唆を与えている。日本の新聞社や通信社のウェブサイトの記事は、数ヵ月たつと削除されるので固定リンクが張れない。結果として新しい記事の3割以上ある過去記事へのアクセスを逃していると推定される。記事を削除するのは有料データベースのビジネスを守るためだが、新聞社のデータベース事業はどこも赤字で、検索エンジンの発達で利用者は減る一方だ。リンクを切ることで守るものより、失うもののほうがはるかに多いのではないか。

 こうした新聞の資料価値を生かそうとする試みもある。ニューヨーク・タイムズのTimes Topicsという欄には辞書のようにキーワードが並び、グーグルでキーワードを検索するとWikipediaの次ぐらいに出てくる。このように固定リンクによって媒体価値を高めれば、新聞の蓄積してきた膨大な情報が生かせる。また取材した情報は、その1割も紙面で利用されていない。質の高い情報を紙面の制約のないウェブで読めるようにすれば、有料のプレミアム・サイトとして採算がとれる可能性もある。

 紙の新聞に明日はないが、読者が求めているのはコンテンツであって紙やテレビではない。今後ウェブがデータベースとして利用されるようになると、新聞社が数十年にわたって蓄積してきた情報の資料価値は高い。古い媒体を捨ててローコストメディアに徹すれば、活字メディアが生き残る道はある。

筆者紹介──池田信夫

池田氏

1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「なぜ世界は不況に陥ったのか 」(池尾和人氏との共著、日経BP社)、「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。

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