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Google WaveのUI設計とiPodの「共通点」 (1/2)

2009年11月17日 20時15分更新

文●小橋川誠己/Web Professional編集部

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 米グーグルやヤフーの第一線で活躍するWeb制作者をスピーカーに招いたカンファレンス&ワークショップイベント「Web Directions East 2009」(WDE 2009)が、11月11日~13日、東京・九段下のベルサール九段で開催された。参加費が1人5万円というプレミアムイベントだが、Webデザイナーを中心に約150名が参加。世界のWebのトレンドを肌で感じられる3日間だった。

基調講演

Web Directions East 2009基調講演「Google Waveの舞台裏」の様子


Google Waveのデザイナーが語ったUI設計の基準

 13日のカンファレンスの基調講演に立ったのは、米グーグルのインターフェイスデザイナー キャメロン・アダムス氏。アダムス氏は、グーグルが開発中の新しいコミュニケーションサービス「Google Wave」のUIデザインを担当した人物だ。

アダムス氏

米グーグルのインターフェイスデザイナー キャメロン・アダムス氏


 アダムス氏は「Google Waveの舞台裏」と題した講演の中で、Google Waveのプロジェクトの立ち上げから、UI設計、ローンチに至るまでのプロセスを紹介した。アダムス氏が語ったのは、誰も使ったことがない新しいサービスを立ち上げる楽しさと、難しさ。Google Waveは、ドキュメントとディスカッションをシームレスにつなぎ、サーバーに集約することで、コラボレーション/コミュニケーションをWeb上で完結させることを目指している。ちょうどグーグルがGoogleマップで地図サービスを再定義したように、「(単体では)革新的ではないもの」(アダムス氏)を組み合わせて生まれた、まったく新しいサービスがGoogle Waveだ。

 だが、“ないもの”をデザインする過程には困難が付きまとう。アダムス氏はGoogle WaveのUI設計にあたって、「発見可能性(Discoverability)」と「効率性(Efficiency)」の2つの軸でデザインパターンを検討したという。

グラフ

「発見可能性」と「効率性」を軸に使いやすい新しいUIを検討した


 「発見可能性」は初めてアプリケーションに触れたときの、「効率性」は繰り返し使うときの使い勝手を指す。たとえば、MDプレーヤーの「早送り」や「巻き戻し」ボタンは誰もが操作を知っており、かつ効率的に操作できる点で優れたUIといえる。だが、iPodのようなMP3プレーヤーで持ち運べる楽曲数は膨大で、1曲ずつ切り替える操作ボタンでは効率が悪く、MDプレーヤーのUIをMP3プレーヤーにあてはめてもうまくいかない。MDプレーヤーとMP3プレーヤーの機能はほとんど同じだが、本質的な違いに気付き、適切なUIを開発した点がアップルの成功につながったわけだ。

 Google Waveの場合も同様で、同じコミュニケーションサービスであるGmailのデザインパターンは適用できなかった。Google Wave上でのコミュニケーションは、スレッドの分岐やグルーピングなど、メッセージ間の関係がメールよりも複雑だ。試行錯誤を繰り返しながら、発見可能性と効率性のバランスを取った現在のデザインに落ち着いたという。

位置や表現方法が検討された「返信ボタン」。さまざまなデザインが試行錯誤された

 18カ月もの時間をかけてユーザーテストを実施し、プレビューが公開されたGoogle Waveだが、アダムス氏はなお改善の余地があるとする。一方で、「新しいものに慣れるのには時間がかかるものだ」と話し、Google Waveの完成度に自信を示した。

「Twitterも最初の頃は誰も使えなかった。でも今は多くの人が使うサービスになった。Google Waveどれぐらいの人々に気に入ってもらえるかは分からないし、気に入らない人もいるかもしれない。世界の67億人のうち、1割ぐらいの人が気に入ってくれればいい」(アダムス氏)

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