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海外では後続プレーヤーも

Kindleは日本で受け入れられるか?

2009年11月09日 09時00分更新

文● 秋山文野

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無料通信はユーザー登録した国内のみ

 Kindleのワイヤレス通信はAT&Tの国際ローミングを利用している。通信料はAmazon.com持ち。本体と書籍の価格に通信料が組み込まれているので、ユーザー負担のない画期的なモデルではある。ただし、日本の住所で登録したユーザーが海外に持ち出して利用すると、ローミング料金が別途かかる。

CNNやWikipedia、Googleなどのブックマークがあらかじめ用意され、Web閲覧もできるKindleだが表示できるのは英語サイトのみ。

 ひとまず日本国内では無料、ということならKindleはパケット料無料のネット閲覧端末として使いたいと考えた。しかし現状では表示できるウェブページは英語サイトのみとなっている。組み込みブラウザーは「NetFront Browser」なので日本語表示させようと思えば可能なはずだが、現時点でその機能を実現したら通信料が際限なくなってしまうためだろうか? モノクロのみで表示速度も少々遅いという制約があるため、携帯電話などに比較して見劣りする面はあるだろう。しかし、外出先で扱いやすくて通信料もタダ、ということになったら、食指が動く層も出てくるだろう。


後発機がスペックを上げてきた

 実はこここのところ電子書籍端末市場の動きが活発化している。

 アメリカの大手書店チェーン バーンズ&ノーブルは、Kindleの対抗馬となるブックリーダー「nook」を発表した。価格は同じ259ドル(約2万3300円)、電子ペーパーに加え、3.5型のタッチスクリーン液晶も搭載している。本体メモリ容量はKindleの1.5GBに対して2GB。microSDカードスロットも搭載している。

 3Gネットワークが無料で利用できるほか、Wi-Fiにも対応している。書籍フォーマットはEPub形式でGoogleブックスにも対応。PDFファイルもそのまま読めてしまう。さらには、nookユーザー同士で14日以内の電子書籍貸し借りが可能……と、スペックはKindleに比較してかなり豪華だ。今のところ米国外への販売は行わないそうだが、海外市場でKindle追い上げが続いていることは確かだ。

 ライバル登場もあってか、Kindle周辺の状況も刻々と変わっている。インターナショナル版発売時の価格279ドル(約2万5900円)がいきなり20ドルも値下げされたと思ったら、今度はKindle for PCの登場だ。これはPC向けのフリーソフトで、Kindle書籍をPC上で読めるというもの。

今月中には登場というKindle for PCのダウンロード案内登録サイト。Kindle本体とWhispersyncでつながって、どちらでも読みかけ書籍を再開できる環境になるはず。

 Windows7環境であれば、タッチスクリーン機能に対応しているので指でページめくりが可能になる。また、ハードウェア版のKindleやiPhone上のKindle書籍とWhispersync機能でシンクロでき、しおりや最後に読んだページ、記録したメモやハイライトを複数の環境で共有できる。11月中にダウンロード開始となる予定でまだ詳細はわからない。こうしたツールを使うことで、手持ちのPDFなどをAZWに変換すれば、Whispersyncでつながったどの機器でも再読み込みの手間なしに共有できる、ということになれば独自形式の意味もあるのだが……。


つい比べてしまう、電子書籍の価格

 Kindleで本を買う手軽さにはかなりひかれたが、重要なのはコンテンツであり、結局は電子書籍をどれだけ低価格で提供できるかが勝敗を決めるのではないか。

 アメリカでは新聞の救い主ともいわれるKindleだが、1年分のNew York Times Kindle Editionの購読料は27ドル99セント(約2519円)、しかも14日分のフリートライアル付きだ。それで毎日何もしなくとも端末に新聞が届くとなればそれは買うかも……と思う。がんばってすべての記事を読まなくとも、拾い読みだけでも十分もとがとれそうだし、それで3000円弱なら、と日本に住んでいてさえ思うのだ。

 夜中にたまたま好きな作家の新刊が発売されていたことに気がついたところで紙の書籍ではどうしようもないが、電子ブックリーダーなら検索して1分後には衝動買いも可能だ。9月に発売されたリチャード・ドーキンスの「The Greatest Show on Earth」をチェックしてみたところ、Kindleストアだと11ドル99セント(1079円)、バーンズ&ノーブルのeBooksなら9ドル99セント(899円)だ。どちらが安いかは書籍による、としか言えないが、ユーザーの選択肢が「安い方」に向うのは確かだ。

 日本語書籍の発売がいったいいつになるのか気になるところだが、今のところ具体的な話は出ていない。

 逆にソフトバンク クリエイティブは、ロマンス小説シリーズを原作としたコミック「ハーレクインコミックス」の英訳版5タイトルを、(日本出荷と合わせたかのように)10月11日からKindle Storeで販売開始した。

 コミックを読むためにはある程度の画面サイズが必要ということなのだろう、KindleStoreではより大画面の「KINDLE DXに最適」という注意書がある。日本人のためのコンテンツはもちろんだが、日本のコンテンツを海外に発信するという動きも活発化してほしいところだ。

 いずれにしても日本語版コンテンツが揃うのはまだ先になるだろう。「電子書籍は安い」と衝動買いを誘うことができ、なおかつ日本国内での通信料を吸収できる「価格の落とし所はどこか」が見えた時点で、Kindleは魅力的な選択肢になる。もちろんそのときは、ブラウザーの日本語表示対応もセットにしてほしい。

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