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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第94回

デザインから考える、ケータイのこれから

2009年11月05日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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インタラクションのデザインツール

 言うまでもないが、iPhoneはアプリというマーケットと端末の自由な方向づけをしたデザインが新しく、また向こう5年は普遍的な存在になりそうだ。デザイン感度が高いユーザーがiPhoneのソフトウエア・デザインに感覚的に気づいて選んでいるとすれば、これまでのケータイの作り方とは違うアプローチが必要になる。

 その1つのきっかけを、デザイナーズウィークのいくつかのイベントへの参加を通じて考えていた。

 東京デザイナーズウィークは、なにもデザイン展示だけではない。例えば世界的なデザインコンサルティング会社であるIDEOが東京ミッドタウンで、またナイキなどのクライアントを持つ広告代理店、ワイデン&ケネディが原宿のカフェで、それぞれ公開ワークショップを開いていた。

code: TiWIKi

イベントの1つ、DESIGNTIDE TOKYO 2009で展示されていた「code: TiWIKi」。渋谷に300体いるTiWiKiをケータイから位置情報付きの写真で送信すると、自分では動けないキャラクターが旅をしている風景ができ上がるインタラクティブアートだ

公開ワークショップ

東京ミッドタウンで行なわれた、IDEOと博報堂の公開ワークショップ。観察から学び、想起し、創造し、共有するというフレームワークに沿った活動が日々パネル展示されていく様子は興味深かった

 後者の「WK+To Go」に少しお邪魔した。カフェの一角で何となく議論が行なわれていて、だんだんそこに人が集まってきて、議論が有機的に広がっていく感覚がユニークだった。議論に熱中しながらふと周囲を見ると、立って話を聞いている人がいるほどにカフェを埋め尽くしている。

 さらにその様子がTwitterとUstreamで中継されていて、会場で投げかけられた疑問に対する意見がインターネットを通じて集められる。こうして、東京の原宿にあるカフェでの議論は、インターネットを通じて想像以上に多くの人たちとのインタラクションへと広がっていく。とても興味深く、また白熱する場であった。

 たとえばこのようなインタラクションの場を創ったり、その間を取り持つツールとしてケータイが作用するか、という話である。

 そのカフェの議論の場の中では、模造紙サイズのポストイットが黒板代わりになり、MacBookからTwitterやUstreamの中継がなされ、その場をファシリテートしていた。もちろんケータイはTwitterクライアントとして使えるが、何か積極的に場を創るツールにはなっていない。

 これだけ生活に深く入り込んでいる端末が、リアルなインタラクションの場で何も作用しない点で感じたのは、パーソナルな情報手段であるがゆえに、人間がリアルなコミュニケーションを取るときにはどちらかというとうまく役立たなかったり、対面にカットインしてくる邪魔者であり続けている問題があるからかもしれない。

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