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海外の通信事情を見て、改めて「日本品質」の幸せさを知る

現地法人の社長が語る!ブラジルやロシアのICT動向

2009年11月02日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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先週行なわれた「NTT Communications Forum 2009」ではグローバル展開を意識したユーザー向けの、各国の通信事情に関するセミナーも開催された。昨今注目されるBRICsのうち、あまり聞けないブラジルとロシアの通信事情に関するセミナーに参加してきた。

忙しい人は4台のケータイ
ブラジル

 NTTコミュニケーションズ ブラジル社長の足立幸雄氏は、オリンピックの開催も決まり、経済的にも成長を続けるブラジルの通信事情を説明した。

NTTコミュニケーションズ ブラジル社長の足立幸雄氏

 足立氏によると1億9400万の人口を持つブラジルは、固定電話が約4000万回線で頭打ちになる一方、ケータイの加入者は1億6500万ときわめて好調な伸びを示しているという。一方、インターネットに関しては、256kbps以上がブロードバンドと定義されているが、6230万回線のうち、8割がダイヤルアップという状況だ。「ブロードバンドはADSLとCATVがメインで、現状では光はない。とにかく遅いし、つながらない。通信機器も高くて、国際ケーブルも細い」(足立氏)と、通信環境は恵まれていない状態。

 一方、ブラジルは通信事業に関しては外資の参入にオープンで、ブラジル資本のオイ(Oi)のほかは、スペイン資本のテレフォニカ(Telefonica)やメキシコ資本のエンブラテル(Embratel)などが有力プレーヤーとして事業を展開している。この3社とケータイのみを手がけるTIMを加えたおよそ4社くらいで業界を独占しているという。前述のように固定電話よりケータイのほうが加入者数が多いので、現状GSMのインフラを3Gに移行しつつある状態だ。とはいえ、4社の通話エリアがそれぞれ異なるため、サンパウロやリオデジャネイロなどでも、つながらないことが多いとのこと。「本当に忙しくて、ケータイをよく使うビジネスマンは4社4台持っている」(足立氏)のコメントには会場から苦笑が漏れた。

 こうした中、NTTブラジルでは現地のパートナーとの協業で、おもに現地の日系企業に安定した通信環境を提供している。2009年12月にはNTTコミュニケーションズのグローバルIPバックボーンに接続するとともに、サンパウロのデータセンターを拡張。ポルトガル語、スペイン語、日本語、英語などで利用可能なカスタマサポートセンターを開設するという。

入り乱れるロシアの通信事業者

 「昨日、氷点下のモスクワからやってきました」という挨拶から始めたNTTコミュニケーションズ ロシア社長の大田良浩氏は、ロシアの金融危機の影響とICT動向を説明した。

NTTコミュニケーションズ ロシア社長の大田良浩氏(写真はNTTコミュニケーションズより提供

 まず同氏はロシアの成長の源泉となる原油価格を基軸にGDP、株価、為替、外貨準備高などの指標を比較し、金融危機の影響を分析。「原油価格と株価を調べると、2008年の5月から比べると、2009年1月は81%も下落。BRICsの中でも最大の下げ幅だった。自動車販売や不動産などのダメージが大きく、実体経済も冷え込みは続いている。だが、その後夏過ぎから徐々に回復基調になっている」と述べた。日系企業の参入も増加している状態で、ロシアでのビジネスをきちんとサポートする必要があるとしている。

 ロシアの通信事業に関して説明には大きく政府系、民間財閥、外資系の3つのグループがあるが、外資系はフランステレコムくらいしかない。最大勢力の政府系通信事業者は75%出資する通信系持ち株会社スビャジインベストとロシア鉄道傘下のTTKがある。スビャジインベストの傘下には長距離のロステレコムがあり、その配下に7つの市内通信事業者とスカイリンクというケータイ事業者があるという。ちなみに現在ロシア政府が現在取り組んでいるのが、ロステレコムの民営化。遠からず、政府が100%投資し、傘下の7事業者を吸収することになりそうだという。その他、民間財閥はシステマ、アルファグループ、テレコミニベストの3つのグループがあり、それぞれMTS、ビンペルコム、メガフォンとそれぞれケータイ事業者を持っているとのこと。ちなみにNTTコミュニケーションズはTTKと、スビャジインベストはKDDIと提携している。

 通信分野ごとの普及率に関しては固定電話31%、携帯電話115%という普及率に対して、ブロードバンドは2.8%となっている。ただ、ブロードバンドの伸び率は大きく、料金も3Mbpsで月額1400円程度で済む。注目はヨタ(Yota)という新興事業者で、ロシアで4Gと呼ばれるWiMAXを展開しており、「サンクトペテルブルクにはヨタの宣伝ばかり」(大田氏)とのこと。2700円で使い放題で、世界最大の15万契約を持っているという。

 こうしたなか、NTTコミュニケーションズ ロシアは2009年4月に設立され、事業ライセンスを取得。現状は2人の日本人と、8人の現地人スタッフで業務を行なっている。

 いずれの国も通信サービスに関してはまだまだという状況で、信頼性の高い回線を当たり前のように使える「日本品質」のありがたみを感じた。このほか、インドや中国、タイ、ベトナム、マレーシアなどの通信事情を説明するセミナーが展示会場でも行なわれていた。

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