このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

元祖NIerのネットワンのトップが現在のIT業界にもの申す

ネットワン吉野社長が語る「仮想化が普及しない理由」

2009年10月27日 09時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ネットワンシステムズ(以下、ネットワン)が、仮想化やクラウドといった新しい市場に対して果敢にチャレンジしている。「ネットワークが儲からないから?」「流行に乗っているだけ?」 業界を長く見てきたネットワン吉野 孝行社長に聞くと、その理由は「既存のSIerがフォーカスしている仕事が変わってきているから」ということになるのかもしれない。

ネットワンがサーバ・ストレージや
仮想化をやる理由

ネットワンシステムズ代表取締役社長 吉野孝行氏

 ネットワンが日本のネットワークインテグレータの草分けであることに異論を挟む方はいないだろう。今から20年前の1989年にシスコのマルチプロトコルルータを国内で独占販売し、以降、日本で数多くのネットワーク構築に携わってきた。21世紀に入ってからはセキュリティ分野にも注力し、PCI DSSなどのコンサルティングサービスや次世代ファイアウォールを謳うパロアルトネットワークスの「PAシリーズ」などをいち早く日本で展開してきた。

 そして、昨今特に力を入れているのが、サーバ・ストレージ、仮想化の分野。ネットワンシステムズ代表取締役社長である吉野社長は「2~3年前、サーバやストレージの面倒を見てほしい、仮想化とはどんな効果があるのか知りたいといった、顧客からの要望や質問がありました。一方で、社内的にはネットワーク分野の成長率が鈍化しているという事情がありました。弊社が今後とも安定した成長を続けていくためには新規事業の領域に進出する必要があり、2005年頃から仮想化の分野を育ててきたのです」とのこと。2008年には仮想化技術に長けたエクシードとの資本業務提携を進めた。すでにVMwareのVIPプレミアパートナにも認定されており、ネットワークベンダーが「ちょっと手を出しました」という程度ではない本気ぶりがうかがえる。その結果、2008年度にはすでに約70億円という実績となった。

 数多くのSIerがひしめく中、後から参入してきたネットワンの優位点はなにか? 「日本でも、米国でも、サーバベンダーはネットワークに弱いと言われています。ネットワーク技術者が少ないんです。その意味では21年間ネットワークをやってきた我々は実績がある。私たちはネットワークを見ることで、アプリケーションの挙動やCPUの利用効率を知ることができますが、こうしたことは、昔はシステムインテグレータがやっていたんです。しかし、昨今は金物(ハードウェア)が売れなくなってきたこと、そしてSIerのエンジニアがソフトウェア開発にシフトしてしまったことで、やる人が少なくなってしまった」と吉野氏は語る。その結果、サーバはどれでも大きな違いはないという状況になり、製品選びは簡単になった一方、どのように稼働しているかを見られる人がいなくなってしまったというのが吉野氏の見立てだ。

 これに対して、ネットワンの差別化要因は長年培ってきた評価能力とそれに基づいたインテグレーション能力だ。「たとえばソニー様の提供サービス基盤におけるサーバ統合で、お客様から直接言われたのは、『他社は機能紹介だけだった。しかし、ネットワンは実機の動作検証に基づいたシステム提案だったということです。当初、ネットワンはサーバやストレージをやったことないだろうと思われたようですが、こうした評価能力を買われて、発注をいただけました」と吉野氏は話す。

(次ページ、「仮想化が普及しないのはインテグレーションがないから」)


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ