Open Screen Projectに見えるアドビの思惑
モバイル端末、非Windows PCに広く拡大するFlash
あわせて発表された携帯機器向けの「Flash Player 10.1」も大きなニュースだ。iPhoneは対応デバイスに含まれないが、いよいよ携帯電話でもフルにFlashコンテンツを再生できるようになるという。AndroidおよびSymbian OS向けのパブリックβ版は2010年初頭のリリースが予定され、RIM社と共同でBlackBerry端末向けFlash Playerの開発も進めるとのこと。
この携帯端末向けFlash Playerの前進は、「Open Screen Project」の成果だ。同プロジェクトは、Adobe Flash PlayerランタイムをPCや携帯端末、デジタル家電などで実行できるよう環境を整えるべく、アドビが2008年5月に発足させたものである。
Flashというプラットフォームを開放することは、アドビにとってメリットがある。製品の完全な囲い込みはできなくなるが、市場の大幅な拡大が見込める。アドビはプロジェクトの盟主として開発をリードすれば、市場の拡大過程においても優位な立場を維持できるはずだからだ。これはPDFの成功、つまり自社で開発したPDFを世界標準の文書フォーマットとして普及させるべく仕様を公開し、2008年にはISO標準となったという経験からしても、疑いの余地はないだろう。
そして今回、Open Screen ProjectにはGoogleも参加を表明。前述したAndroidは確定として、将来リリース予定のChrome OSにおけるFlashサポートも、かなり確度が高まったといえる。
プロジェクト発足当初からのメンバー企業であるクアルコムとも、新しい試みが始まった。同社製チップセット「Snapdragon」向けにFlash Player 10.1を最適化、パフォーマンスを大幅に向上させスマートフォンなどの携帯端末でも実行可能にするというものだ。対応機種は明言されていないが、東芝製スマートフォンという情報から判断すると、国内ではドコモからリリースされている「T-01A」を指しているものと思われる。
ともあれ、Open Screen Projectの最初の成果物であるFlash Player 10.1は、PC向け(Windows/Mac/Linux)が2009年後半、スマートフォン向け(Windows Mobile/Palm webOS)が年内にも開発者向けとして公開される。マルチタッチや加速度センサーなど多くの新機能に目が向きがちだが、ハードウェアの違いを越えてどこまで共通の再生環境を実現できているのか、検証が必要となるだろう。