「自分が持ってかっこいいこと」が大事
もっと大きな理由としては、消費者が注目するポイントが異なるという点だ。やや極端な例を出せば、尖ったパソコンや新しいデジカメが出れば、メディア関係者を呼び、デジタルガジェットを携えたモデルによるファッションショーをも開催するのが中国流のPR手法。つまり消費者に対して、いかに「持っている自分が魅力的で格好良く綺麗なのか」を訴えるわけだ。
デジタルガジェットを紹介するモノマガジン(関連記事1)もモデルにデジタルガジェットを持たせた写真を見開きで掲載している。デジタルガジェットに限らず、中国の車のテレビCMもまた、乗っている自分が格好いいというイメージを連想するものだけであり、日本のテレビでの車の魅せ方とはベクトルが異なる。
中国では「他サイトのニュースを全文拝借しても構わない」というメディア業界の商習慣(関連記事2)があることから、日本の著名IT系サイトの記事を、内容を中文に訳した上で写真をそのまま無許可で拝借する記事が多数ある。しかし日本メディアの分解記事インタビューを無断拝借した記事は極めて少ない。
ちなみに最も拝借される記事は、日本の携帯電話の新製品発表会やデジカメの撮影サンプル付きのレビュー記事である。また中国で日本のテレビコンテンツや世界のドキュメンタリーコンテンツの海賊版が蔓延する中において、「プロジェクトX」の海賊版を海賊版販売店で見る機会はやはり非常に少ない。
「モノ作りの日本人」と称し称されるだけに、日本人ほどモノ作りマインドを持つ国民性のある国はないだろう。香港の多国籍なショッピングストリートを見るに、逆に中国のように「高価でクールな製品を持っていれば魅力的」と思う国民は多いような気がする。外国人に「それ格好いいね」と言われて、「薄くて軽いよね、よくこんなの創っちゃうよね」と語ってみたところで、「おまえは何を言っているんだ」と返されるのがオチかもしれない。発表会でどれだけ真面目に熱心にモノ作りをしたことを発表するよりは、ファッションショーをしたほうがよほど消費者の心を打つ。
「中国は日本の数十年前と同じ」と日中両国を時間を超えて同一視する考え方を持つ人もいるが、根本的なマインドは「モノ作りの日本人」と「商売上手な中国人」であり、異なると考える。今後も日本だけが良くも悪くも日本的なこだわりのモノ作りの製品をリリースし続けるのではないか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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