「Silverlight 3」や「Expression 3」シリーズなど(関連記事)、ここのところWeb関連製品の発表が続くマイクロソフトが、10月5日、Web業界向けに2つの新たな施策をスタートした。1つは「WebsiteSpark」プログラム、もう1つは「Windows Web Application Gallery 2.0」というWebサイトだ。
ExpressionやVisual Studioが3年間無償の「WebsiteSpark」
「WebsiteSpark」は、中小のWeb制作/開発会社に対して、マイクロソフトのWeb関連製品を3年間無償で利用できる権利を提供するプログラム。「従業員数25名以下」などの一定の要件さえ満たせば、「Expression Studio 3」「Visual Studio 2008 Professional Edition」などのデザイン/開発ツール、「Windows Web Server 2008」「SQL Server 2008 Web Edition」などのサーバーソフトが実質“タダ”で使えるというから驚きだ(ただし、3年の期間終了後に100ドルの支払いが必要)。ほかにも、技術サポートの無償提供(2インシデント)、技術情報やトレーニング素材の提供などの魅力的な特典がそろう。
■WebsiteSparkで無償提供されるマイクロソフト製品
製品名 | ライセンス数 | 価格(参考) |
---|---|---|
Visual Studio 2008 Professional Edition | 3 | 12万8000円 |
Expression Studio 3 | 1 | 7万5800円 |
Expression Web 3 | 2 | 1万8800円 |
Windows Web Server 2008 ※ | 3 | 8万5800円 |
SQL Server 2008 Web Edition ※ | 3 | 44万3000円 |
※サーバー製品は検証・デモンストレーション用途で利用可能。本番運用の場合は別途契約が必要。 ※価格は、パッケージ版を新規購入した場合の1ライセンスあたりの推定価格(税別)。 |
気になる“参加要件”は、前の「従業員数25名以下」のほか、「Web制作を主たる事業としていること」「半年に一度以上、WebsiteSparkに含まれる製品を使ったWebサイトを構築すること」だけ。法人格を取得していない個人事業主でも、「Webサイトなどを通じてWeb制作/開発の業務をしていることが確認できれば参加可能」(パートナーテクノロジー推進部オーディエンス マーケティングマネージャの金尾卓文氏)だという。
ちなみに、従業員数25名以下という基準は日本だけで、海外の場合は10名以下。もともとWeb制作会社には10~20名規模の小さな企業が多いだけに、相当数の企業がWebsiteSparkの対象になると見られる。「追加ライセンスの購入に期待する」(マイクロソフト)とはいえ、「そんなに対象を広げて売上に影響はないのか?」とこっちが心配になるほどの気前のよさだ。
お詫びと訂正:記事掲出当初、WebsiteSparkが3年間の期間中・期間後も一切費用が発生しないかのような記述となっていましたが、正確には「期間後」に100ドルをマイクロソフトに対して支払う必要があります。詳細は、マイクロソフトの「プログラム ガイド」(PDF)を参照ください。記事は訂正済みです(2009年10月6日)。
MSが作ったWebアプリカタログ「Web Application Gallery」
もう1つの施策「Windows Web Application Gallery 2.0」は、名前のとおり、マイクロソフトが用意したWebアプリケーションのカタログサイトだ。専用ツール「Web Platform Installer 2.0」も併せて用意し、Webアプリをデスクトップアプリのような感覚でWindows Server上に展開できるようにした。
肝心のWebアプリのラインナップには、マイクロソフト製だけでなく、オープンソースソフト(OSS)も含まれる。「WordPress」「SugerCRM」など、すでに20種類以上のOSSが登録されており、今後はOSSのコミュニティを巻き込んで拡充させたい考えだ。Web Application Galleryへの登録は無料で、開発者からの申請に基づき一定の審査を経た上で公開される。OSS開発者にとってはより多くのユーザーを獲得でき、ユーザーにとってはより簡単にOSSを導入できるメリットがあるという。
狙いはサーバー製品の拡販か
2つの施策を見ていると、「なぜマイクロソフトがこんなことをしなければいけないのか?」との疑問が沸くかもしれない。マイクロソフトの担当者は、「Windowsプラットフォームを使っていない人にも触れてほしい」と説明するが、ホンネはWindows Serverを中心とするサーバー製品の拡販にあるようだ。
昨年の発表会でマイクロソフトが謳っていた「LAMPからWISAへ」の標語が示しているように(関連記事)、Webの世界ではOSSの利用が圧倒的。イントラでは強いマイクロソフトも、外に開いたWebの世界ではライバルを攻める立場だ。今回の施策で裾野を広げ、何としても巻き返しを図りたい、というのが狙いなのだろう。
そんなマイクロソフトの意図はともかく、高価なサーバーソフトや開発ツールの無償化やOSSの環境を手軽に構築できることは、Web制作/開発会社にとってうれしいニュースであることに変わりない。せっかくの機会を有効に活用してみてはどうだろうか。