やりとりの多いCIFS
WAN経由でのファイル共有で時間がかかるもう1つの理由が、CIFS(Common Internet File System)のオーバーヘッドである。Windowsにおけるファイル共有プロトコルであるCIFSは、もともとLANでの利用を前提としている。そのため、一度に送れるメッセージサイズが小さく、さらに1度に1往復のリクエスト&レスポンスしか実行できない。その結果、非常にやりとりの多い(チャッティ=おしゃべり)なプロトコルとなっているのだ。
具体的に見ると、ファイルサーバの共有フォルダにファイルをドラッグ&ドロップでコピーする操作では、通常なんと4000ものやりとりが発生するという。遅延の少ないLAN内であれば、現実的なレスポンスを得られるが、行ったり来たりに時間のかかるWANだと非常に大きな遅延となる。
WANでの高速化が大きなテーマに
従来、アプリケーションのレスポンスが悪いという事態に対しては、WANの帯域を拡大したり、サーバの処理能力を上げることで対応してきた。しかし、実はこうした方策ではアプリケーションのレスポンス向上に限界が生じてしまう。こうしたことから、複数の技術を用いることで、アプリケーションのレスポンスを向上させるWAN高速化のソリューションに注目が集まっている。
WAN高速化の代表的なサービスが、前述したWAN経由でのファイル共有を現実的なレスポンスで実現するWAFS(Wide Area File Service)である。これは拠点ごとにWAN高速化を専門で行なう装置を設置し、ファイルサーバとのやりとりを高速化するというもの。WAN高速化装置ではデータの圧縮やキャッシングなどでWAN自体に流れるデータ自体を大幅に削減する。また、前述したプロトコルの弱点を解消するため、TCPの高速化オプションを用いたり、CIFSなどでは複数のやりとりをまとめることで、さらなる高速化を実現する(図2)。
さらにWindows VistaやWindows Server 2008では、プロトコルを改良したCIFSの最新バージョンが搭載されているため、以前に比べるとレスポンスもよくなっている。
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